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親の愛と自然の神性の眩しすぎる映像化に涙腺が崩壊:細田守監督『おおかみこどもの雨と雪』

某国に向かう飛行機の中でおおかみこどもの雨と雪を観た。開始早々の河川敷のシーンで小粒の涙が滲み、雪山のシーンで中粒の涙が頬を伝い、その後はあんまり恥ずかしいので言いたくないけれども結果的に大粒の涙がぼろぼろとめどなく零れ落ちたのであった。スチュワーデスが来た時は欠伸した振りして誤魔化すのに苦労した。

しかし泣くとは聞いてたけどここまでの涙腺破壊力とは思わなかった。泣かせようというお涙頂戴の仕掛けがストーリーにあるわけではない。親父が死ぬシーンはあっけなく、大体のストーリー展開とオチは開始しばらくして予測できてしまう。しかしこの映画の傑作ぶりはストーリーの面白さにあるのではなく、ネタバレしたからと言ってこの映画を観る価値は微塵も損なわれない。

設定の合理性やストーリーの整合性、キャラの動機付けの論理性などは二の次として、最先端のアニメーション技術やらその他各種映画技法を多分色々駆使し、人生において能動的&受動的に経験しつつも忘れがちな、親の子に対する無償の愛と、人間がたまにそれと認識できる自然の神性の一瞬の輝きを集めてそれぞれ濃縮し、それを持続的経験として、更にエンターテインメントとして観る人に提示できているところにこの映画の凄みがある。横溢する人間性とその神秘性の奇跡的な映像化。なぜ雪山を駆け回るだけ、たったそれだけのシーンで涙が溢れ出るのか! こんな経験の提供は、実はアニメ映画の独壇場かもしれず(ゲームにもその可能性があるが)、今後の細田守監督の作品に注目したい(ちなみに個人的にサマーウォーズが全然あかんかったので、こっちは映画館まで観に行くのをためらっていた)。

それにしてもこれストーリー的に小さい子供が見てもなんにも面白くないであろうことは必定で、完全に大人の為の映画であった。ところで例えば思春期の子供が見たらどう思うか。「感動した」とか言うたらそいつはただのあかんやつであろう。自然の描写が綺麗、設定に無理あるわ、きもい、などというのが「子供」の感想になるだろう。子供のいる親は必見。

今月DVD&ブルーレイが出るとのこと。まだ観ていない人は、娯楽アニメ的「楽しさ」「可愛さ」に期待すべきではなく、予定調和的「悲しさ」に心配する必要もない。ただひたすら芸術的「眩しさ」に目が眩み、反射的に涙が流れるのに任せればそれだけで心洗われること請け合いである。

おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]

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