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映画『メッセージ』音楽担当のヨハン・ヨハンソンのおすすめオリジナル・アルバム4選

『メッセージ』(オリジナル・サウンドトラック)

映像美を引き立てる神秘的かつ不穏な音楽

映画『メッセージ』が日本で公開され話題になっております。

ウロボロス的(円環的)なお話好きにはたまらない、映画を観終わった後でいくつか思い出せる限りのシーンを反芻して、そこに隠された意味を考察する楽しみを与えてくれるSF作品です(例えば宇宙船の形は、実はばかうけでもコンタクトレンズでもなく、原題である「Arrival」という単語のもう一つの意味を思い出せば、ははぁ〜んとなるなど、シーンに複数の意味を持たせる謎解きの多い、象徴的表現の多い映画)。

そんな映画を盛り上げる音楽を担当したのは、アイスランド出身のポスト・クラシカルの作曲家、ヨハン・ヨハンソン(Jóhann Jóhannsson)氏。これまでに映画音楽も多数手がけられていますが、『メッセージ』のサウンドトラックも終始灰色のモヤがかかったような映像を更に引き立てる、神秘的で不穏な雰囲気漂う音楽を提供していました。

今回は、この映画からヨハン・ヨハンソンをはじめて知った方向けに、個人的におすすめの、映画音楽ではない「オリジナル・アルバム」を4枚ご紹介します。

ちなみにこれらのオリジナル・アルバムは、どれもコンセプト・アルバム的な趣きで、映画に使えそうなものも多いですが、アルバム全体としてのトーンが統一されているために、ひとつの音楽作品としてより長く聴ける味わい深い作品になっています。

順番はおすすめ順でも発表年順でもなく、私が聴いた順番となっています。

1.Fordlândia / ディストピアフェチにはたまらない一枚

Fordlandia (Dig)

私が最初に聴いた一枚。2008年発表(4AD)。

自動車メーカーのフォードが「フォード主義」の実現を図りブラジルに建設した町「フォードランディア」(今は廃墟)にインスパイアされて制作されたアルバム。

現実に存在したディストピアの潰えた夢とその失敗を招いた人間の業の虚しさ・儚さをノスタルジックに描き出した壮大な作品で、メロディの美しさとアルバムトータルとしての雰囲気醸成力は他のアルバムより抜きん出た傑作です。

今作により、ポストクラシカル音楽の第一人者としての評価を決定付けられたように思います。 

▼冒頭でアルバム全体の印象を決定づけた一曲


Jóhann Jóhannsson // Fordlândia (HD)

2.IBM 1401, A User's Manual / 産業考古学的懐古浪漫派音楽

Ibm1401-A Users Manual

『フォードランディア』の前作。2006年発表(4AD)。

ヨハン・ヨハンソン氏の父親が30年以上前に、IBMメインフレーム(昔の大型コンピュータ)で録音した音源に触発された、産業考古学の音楽的研究成果というか、廃棄される機械たちへのレクイエムのような音楽。製作の背景と詳細は下記の記事をご参照ください。とても興味深いです。

wired.jp

本作のアルバム全体としての完成度は、フォードランディアに一歩譲りますが、アルバム最後に収録された、いわゆるボコーダボイスによる詩の朗読がまるでIBM 1401本体が哀しげな恋歌を歌っているかのような"Part 5/The Sun's Gone Dim and the Sky's Turned Black"の美しさは際立っています。コンピュータのための鎮魂歌を聴くのはどこまで行っても人間なので、この曲の極度にエモーショナルなメロディを聴いていると、機械に対する気恥ずかしさのようなむずがゆい複雑な感情が沸いてきます。


Johann Johannsson - The Sun's Gone Dim And The Sky's Turned Black

 

3.Virðulegu Forsetar / 反復するドローンとメロディ

Virthulegu Forsetar (W/Dvd)

セカンドアルバム。2004年発表(touch)

これはすごいです。約15分の曲が3曲、約21分の曲が1曲の計4曲収録。本作は管楽器が全面的にフィーチャーされており、朝日が昇るような、目の覚めるような爽やかメロディが鳴ったかと思うと、立ち消えてドローンがしばらく続き、また、ふとメロディが揺蕩(たゆた)うように立ち昇り、すぐにまた持続音の暗い雲に覆われる、こんな反復が延々と続く一枚です。静かな休日の朝におすすめです。

4.Orphee / 円熟の傑作

Orphee

2016年発表の現時点(2017年5月)の最新アルバム(Deutsche Grammophon)。

オルフェ(=オルフェウスもしくはオルペウス)というタイトルと、このジャケットからして傑作であることが約束されています。 

ポスト・クラシカル業界の第一人者としての貫禄を見せつける、芸術讃歌。

www.youtube.com

【重要】でも実は・・・

しかし、映画『メッセージ』の冒頭に流れる、映画全体の物悲しい雰囲気を決定づけるエモーショナルなメロディが印象的なテーマ曲と言っても過言ではないような曲は、実はヨハン・ヨハンソンの作曲ではありません。

この曲は、ポスト・クラシカルのもう一人の雄、マックス・リヒター(Max Richter)氏による"On the Nature of Daylight"です。この曲が気に入って『メッセージ』のサントラを買っても(サントラのトラックリストを見る限り)収録されていないのでご注意ください。


Max Richter - On the Nature of Daylight

映画にぴったりの曲ですね。

マックス・リヒターは以下のページで紹介しています。

www.materialized.biz

ちなみに、ヨハン・ヨハンソンは、今年(2017年)公開予定の映画『ブレードランナー 2049』(監督は『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ氏)でも音楽を担当しています。

▼本記事で紹介したオススメ4作品
フォードランディア

フォードランディア

 
Ibm1401-A Users Manual

Ibm1401-A Users Manual

 
Virthulegu Forsetar (W/Dvd)

Virthulegu Forsetar (W/Dvd)

 
Orphee

Orphee

 

 

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