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最近もの忘れの激しいヒトの為の音楽?!:The Caretaker / Everywhere at the End of Time: Stage 4 レビュー

Everywhere At The End Of Time: Stage 4 [Analog]

「痴呆症」「失われた記憶」をテーマにした全6部作

英国の電子音楽家、ジェイムス・リーランド・カービィ(James Leyland Kerby)氏によるプロジェクト、The Caretakerの全6部作シリーズ『Everywhere at the End of Time』の第4部がこのほど発売されました。

なによりもまず、英国人画家イヴァン・シール(Ivan Seal)氏(45歳)*1の絵画がフィーチャーされたジャケットが素晴らしく、Boomkatでアナログ盤を購入しました。2枚組で、MP3ダウンロード権利付です。

Everywhere at the End of Time』シリーズは、「痴呆症」「記憶喪失」「失われた過去」をテーマにしたコンセプト・アルバム・シリーズで、アンビエント・ミュージックの類になると思います。第1部から第4部まで簡単に紹介します。

経験しない過去への郷愁を掻き立てる第1部

Everywhere at the End of Time [Analog]

第1部は、ほとんど忘れ去られた古き良きダンスホールミュージック(ボールルームジャズ/クラシック?)のレコード・サンプリング音源(雑音まじり)をつなぎ合わせた曲の集まりで、コンセプトとか関係なく、単純にゆったりとした非常に心地よいアンビエント・ジャズ(?)のような趣きです。

流麗なメロディにかぶさるブツブツとしたノイズが、自分が経験していない古き良き過去へのバーチャルな郷愁を掻き立ててくれます。


The Caretaker - Everywhere at the end of time (stage one) (Full album)

記憶が曖昧になり不穏感が漂い始める第2部

EVERYWHERE AT THE END OF TIME: STAGE 2 [LP] [Analog]

第2部もほぼ同じようなサンプルが使われていますが、古いレコードに起因するノイズに、さらにエフェクトが加えられていき、靄がかかったように、メロディの輪郭がやや崩れていきます。

いつも見ている景色にどこか違和感を感じるような、パラレルワールドに迷いこんだような、デジャブが1時間に10回起こったような、不穏な雰囲気が漂いはじめます。

第3部で意識は混濁して記憶の断片化が進行

EVERYWHERE AT THE END OF TIME: STAGE 3 [LP] [Analog]

第3部では、さらに意識は混濁してノイズの割合が増えていき、アルバムの後半になると、メロディは遠くでかすかに聞こえるだけの、不気味な展開になっていきます。

まるで青春時代に繰り返し聞いたレコードのメロディを忘れたことさえ忘れていくように。メロディはバラバラになって放り出され、もとの形に戻れないまま、ノイズの暗雲がどんどん垂れ込めてきます。

記憶の喪失を止めようとする焦燥感が悲しい第4部

Everywhere At The End Of Time: Stage 4 [Analog]

そして今回発売された第4部では、これまで、数分のカットアップされた小曲が12曲くらい入っている構成からがらりと変わり、20分強の曲(=レコードの片面いっぱい)が2枚組で4曲という構成になっています。

メロディ(記憶)はほぼ完全に溶けて、聞こえなくなりました。

A面、B面とD面の曲は、同じタイトル「Post Awareness Confusions」(痴呆症の自覚後の困惑?)で、過去の良き日の記憶が失われていくことに気付き、なんとかそれを取り戻そうとして失敗し続ける焦燥感を音にしたような、耳鳴り風のノイズに溢れています。

一方、「Temporary Bliss State」(束の間の至福状態)と名付けれたC面(2枚目のA面)では、以前のサンプリング・メロディとは異なる、やや穏やかな電子音によるメロディが、リスナーにも束の間の休息を与えてくれます。


The Caretaker - Everywhere At The End Of Time - Stage 4 (FULL ALBUM)

残る第5部、第6部が楽しみで仕方ない

次の第5部は2018年9月、第6部は2019年3月のリリースが予定されています。

第4部はほとんど記憶を失ってしまったかような音像でしたが、続く第5部ではどういう展開を見せるのか、そして最終の第6部では、轟音に沈むのか、静かに消えていくのか、はたまた記憶(メロディ)を取り戻すのか、非常に楽しみなところです。

ちなみに、本記事のタイトルはあんまり意味がありませんので悪しからず。

第1部~第3部をまとめたCD3枚組も発売中

上に挙げた第3部までをセットにしたCDも出ています。

実に素晴らしいのでぜひ買って聴いてみてください(記憶は悪くなりません)。

デジタル盤の方が安いですが、CD盤はイヴァン・シール氏の素晴らしいジャケットを楽しむことができます。2017年暮れから2018年の2月頃まで、ほとんど毎日こればっかり家で流していました。

Everywhere at the End of Time Stage 3

Everywhere at the End of Time Stage 3

 

なお、デジタル盤の購入は以下のBandcampページで可能です。

https://thecaretaker.bandcamp.com/album/everywhere-at-the-end-of-time

※2019年3月 追記

全6部が完結したときの記事は以下。

*1:この人の絵、めちゃくちゃいいです。まじで家に欲しい。http://carlfreedman.com/artists/ivan-seal/

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