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Flaming Lipsの新作『Oczy Mlody』感想:アディクティブな会心のポップサイケデリア

4年振り、15枚目のオリジナル・アルバム『オクシィ・ムロディ』

オクシィ・ムロディ

The XXの新譜と同じ日、というかウェイン・コイン氏の誕生日である1月13日に発売されたフレーミング・リップスの新作を買いました。

Oczy Mlody』という見慣れない単語を用いたタイトルは、発売前に公開されたビデオで聴けた緑とピンクと茶色の毒々銀河から立ち登る極彩色の瘴気のようなメロディ(下記参照)にあてられて、「Oxy melody」のモジリかと思っていましたが、ウェイン・コイン氏によると、これはポーランド語で「Eyes of the Young」という意味だそうで、オクシー・ムロディというクールな響きが気に入ったとのこと。

▼アシッドでドリーミーなイントロ『Oczy Mlody』に導かれて幕を開ける実に病的(褒め言葉)な1曲目『How??』

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好き嫌いの別れる作品かもしれないが個人的には満点

今回は歌により重点が置かれています。スペーシーな雰囲気の中で浮遊するようなメロディが際立っています。ウェイン・コイン氏の歌はあいかわらずうまいとは言えないものですが、夢見心地の無根拠なハッピネスを目の前にマテリアライズしてくれるメロディを紡ぎ上げる技量は、15作品目にしてマエストロの域に達しています。

▼愛すべき、愛おしき、幸せムードいっぱいの、サイケデリック・ソングのお手本のような『The Castle』。酔っ払いながら聴いているといろいろとさいこうです。お城は崩れ去り、もはや建てなおすこともできないけれど、この歌があれば、的な現代のフェアリー・テイル。

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シド・バレットやピンクフロイドの影響は、自他ともに認めているところですが、ウェイン・コイン氏の歌はときに「Childish」という形容詞も使われるように、どこか童謡的な響きを持つことがあります。8曲目『Do Glowy』のメロディは往年のソフトロックも想起させます。私の場合は、子供の頃に聴いていまだに覚えている70年代後期〜80年代初期のポンキッキの名曲群さえ連想します。こうしたインナーセルフの波長と合うか合わないかで、もしくは音から視覚的イメージをどれだけ引き出せるか否かで、好き嫌いが分かれそうですが、私は好きです。The XXの新作と並んで、早くも2017年のベストロックレコードが来たという印象です。

聴き手の数だけイメージを花開かせる曲たち

上に紹介したような割りとシンプルでキャッチーな歌ものが随所に配置されていますが、超ドープかつアブストラクトな曲もきちんとハイクオリティで提供されています。

ミルキーウェイに沈み込んで無数の綺羅星の光に包まれて消え去りたいときのやさぐれた気分を詠うような6曲目『Galaxy I Sink』や、岩陰の濡れた草叢に隠れて満月を見上げる悪魔の目を持つヒキガエルの声を闇夜に思い描いたら思いのほかロールシャッハで吐きそうな気分を詠うような9曲目『Listening to the Frogs with Demon Eyes』、飲んだ帰りにシャドウと一緒に間違った方角の家に走って蛙ような10曲目『Almost Home』などは、そのユニークな曲の構成・展開に、ロングキャリアなリップスならではの職人芸を見せてくれます。

▼最後を締めくくる、ちょっと懐古的な曲『We a Famly』。ライブの最後にやって風船と紙吹雪が舞って大合唱になるのが目に浮かぶようです。シンガポールにはどうせ来ないでしょうけど。


The Flaming Lips - We A Famly (Official Lyric Video)

全曲すばらしく相互に補完しあうようなコンセプトアルバム的な雰囲気もある、リップスのDark Side of the Moonと言っても良いような(適当)、実にアディクティブな会心の一作。

オクシィ・ムロディ

オクシィ・ムロディ

  • アーティスト: ザ・フレーミング・リップス
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2017/01/13
  • メディア: CD
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