アジア工芸品の充実のコレクション
今更ながらシンガポールのアジア文明博物館を訪問しました。
金はあるけど歴史は浅いシンガポールの美術館は、世界の美術品のコレクションにはどうしても出遅れたために見どころは少なめです(海外から作品をレンタルして開く特別展も日本と比較するとめちゃくちゃ少ない)。
しかしこのアジア文明博物館は、東南アジアでダントツの先進国だけに、近隣のアジア各国(中東も少し含む)の工芸品、美術品やらを収集して、他では見られない充実したコレクションを誇っていました。
旅行でシンガポールに来られた際はぜひ足を伸ばすことをお勧めします。マーライオンや、アフタヌーンティーセットがインスタ映えするので人気のフラトンホテルも徒歩圏内の場所にあります。
以下に簡単に見どころ、というか私がとくに感銘を受けた品々を、フロアごとに(やや偏り気味に)紹介します。
1階:シルクロード、唐時代の沈没船、海上交易品ほか
入口を入ってすぐのエリアには、ジャワ海のブリトゥン島沖で1998年に発見された、唐時代の沈没船から見つかった品々が展示されています。沈没船は、中国から中東の国に売るための品を積載していた交易船だったようで、ナイスな紋様の陶器がたくさん展示されていました。中東では中国の緑や青の陶器が人気だったようで、中国や現在のベトナムなどの東南アジア各地にあった窯で焼かれたものらしいです。
シルクロード/海上交易品コーナーでは、主に中国で作られた工芸品の数々が展示されていました。最も目を奪われたのがこれ(↓)。
燭台はダサさスレスレのグロテスクな造形とファンシーな配色が素晴らしく、お皿に描かれた写実性と幻想性の塩梅が絶妙な蝶々(蛾?)が実にファンタスマゴリックで必見です。18世紀「Made in China」です。ともすれば「安物」の代名詞ともなった同じ言葉に、時の流れを感じられます。
2階:信仰、宗教、先祖崇拝、儀式
アジア各国の宗教信仰などに関する品を集めたフロア。仏教からイスラム教、ヒンドゥー教、キリスト教、さらには土着信仰まで、神様・仏様・精霊尽くし。薄暗い照明もあって、神妙な気持ちになること請け合いです。仏教やヒンドゥー教の艶かしい木像や石像をガラス越しではなく、直接間近に見ることができます。
キリスト教関係のものの写真がないですが、ヨーロッパ人が植民地時代にアジアの人々に作らせた品々の展示も、由来はどうあれ壮観でした。気狂いじみた彫刻の施された象牙のキャビネットとか、亀の甲羅でできた半透明の箱とか、お宝満載でした。
日本にキリスト教が伝来した頃の展示品もありました。螺鈿細工の和洋折衷宝箱とか、キリスト教禁止の立て看板の本物とか。2階は特に見所が多いです。
3階:装飾品、ファッション、陶磁器
最後は、アジアのファッション展示コーナー。割とこじんまりしているものの、ここも見所が多いです。
ゴールドの煌びやかなものより、吸い込まれるように立ち止まって凝視した一品は、このプラナカンの花嫁用の頭飾りです(↓)。
どうやって被るのか知りませんが、花嫁の美しさを引き立てるのと同時に、女性に対する畏怖の念までをも見る者に(特に花婿に?)与えるようなこのデザインは、天才の仕業としか考えられません。
ファッションコーナーは、主に中国の伝統服が展示されていました。数は少なめ。
このほかにもまだまだ見るべきものはたくさんあります。
もっと早くいったら良かった。展示替えもいくつかあったので、これは再訪の価値ある素晴らしい博物館でした。
しかしミュージアムショップの品揃えは、あんまり展示品に関係ない土産物が多く、正直イマイチでした。どうせなら沈没船で見つかった皿とかカップのレプリカ作ったらいいのに。あの皿なら買うわ。
途中で大雨が降って来たので、建物の写真を撮るの忘れていました。代わりに館内の窓からの景色です。雨の降る日曜日に人の少ない博物館、最高でした。
博物館の概要は以下の通り。
Asia Civilisations Musem (ACM、アジア文明博物館)
住所:1 Empress Place, Singapore 179555
営業時間(年中無休):
月曜から木曜 午前10時〜午後7時
金曜 午前10時〜午後9時
土曜・日曜 午前10時〜午後7時
入場料:8ドル(6歳以下の子供、シンガポール人、永住権者は無料)