今年はSpotifyの有料会員サービスの素晴らしさに気づいて以降、確実に例年よりも多めに新しい音楽を聴きました。しかし、CDを買う枚数は激減しました。
一方で、あまりにも簡単に次から次へと聴けてしまうので、昔のように一枚のレコードを擦り切れるくらいに、何度も繰り返し聴くということは少なくなりました。
それが良いことか悪いことか、といえば、悪いことではないですが、何度も、または時期を変えて聴くことによって分かってくる良さというものは確実にあるので、そうしたものをみすみす逃しているような気もします。
その時の気分や志向、もしくは感受性の成熟度合いによって、良い音楽に一瞬だけ触れながらも、容易に忘れ去り、二度と戻ってこないというような弊害もあるかもしれません。
例えば、ビートルズのように時期によって音楽性の幅が広いバンドの場合などは「あれ聴かずに嫌いと言うとかもったいない!」ということになりやすそう。
そういう私も、学生時代にファンだったヨ・ラ・テンゴ(Yo La Tengo)の今年の新作をSpotifyでさらっと一回だけ聴いて、もうひとつぴんと来なかったのでそのままにしていましたが、いまアマゾンのレビュー読んだら絶賛されてて、聴き直さな、なんてなことになっています。
しかし、死ぬまでにすべての良い音楽は聴けない(=時間と金がない)という人生の悲しみの一つを少しは薄めてくれるような、Spotifyの圧倒的な物量は凄まじく、それだけ多くの音楽に触れる可能性があるということは絶対に良いことではあります。
定額制サービスによって、CDの売上は減ったが、音楽を聴く若者は増えたとも言われる昨今、音楽雑誌は減ってしまっているので、音楽が好きなひとが年末のこの時期、自分勝手にベスト・アルバムをあーだこーだ選出しているのを見るのは常にとても楽しいものです。
本記事が、いつかどこかでだれかの音楽的快感の発見の一助になることを期待しつつ、2018年 マイ年間アルバムベスト10を以下にだらだら紹介します。
文章はただの個人的印象がほとんどですが、たしかアイカワタケシ氏が昔、その名著『虫けら艦隊』で語っていたように(うる憶え)、音楽は印象で語るのが絶対的に楽しく正しいのであります。その人にとっては少なくとも。もうこの本20年前か・・・。
番外 Aphex Twin - Collapse EP
アルバムではなく、EP(30分弱はある)なので番外としますが、これは私にとっての「懐メロ」とでも言えるような作品で、2018年の思い出深い作品として外せません。
というのはつまり、私が大学生時代(90年代末から00年代初頭)に聴きまくっていた、オウテカ(Autechre)とかオヴァル(Oval)とか、そのあたりの当時最も「新しくて」格好良かったノイズ寄りのエレクトロニカにとても近い印象を1曲目の「T69 Collapse」(下記ビデオ御参照)に抱いたからです。
41歳というおっさんになった2018年現在でも、そんな音を「最高にカッコええやん、たまらんですやん」なんて全身の毛穴から電子音を吸入して恍惚となることのできる特殊な性癖、というとキモがられるので言い換えると、こうした音をただの雑音と感じずに楽しむことのできる記憶と感受性を維持できているこの幸せは、自分にとってプライスレス。
いまとなっては、それほど革新性はない音楽かもしれませんが、エイフェックス・ツインの独自性は長年の時を経ても、色褪せず、輝き続けるということが、とりあえず20年スパンでは確認できたということは、この先20年も語り継がれることは確実と言えるでしょう。
▼先行シングルだった1曲目「T69 Collapse」のビデオです。1:50くらいからの展開/崩壊具合がシビれます。
第10位 Courtney Barnett / Tell Me How You Really Feel
さて、ここからベスト10です。
まずはオーストラリアの女性シンガーソングライター、コートニー・バーネット(30歳)のセカンド・アルバム。
この全曲バラエティに富みながらずっといい感じは本当にすごい。
ニルヴァーナみたいな曲から、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ペイブメントを連想させる気だるい雰囲気、パティ・スミス、PJ ハーヴェイ的な尖った感じ、さらにはグラスゴーのギターポップ風味まで、私がいままで聴いて好きになったアーティストの要素をいちいち拾ってくれるような幅広いスタイルを持ちながら、それらすべてが持ち前の緩めのヴォーカルで歌われると腰もくだけるというものです。
実は歌詞もかなりユニークでおもしろい。
ファーストは荒削りな魅力があり(どっちかというとファーストの方が好きですが)、このセカンドで作曲能力のホンモノさを証明して技術力も向上、次のサードですごいアルバムを作ってくれそうな気がして、今からとても期待しています。
▼先行で公開された曲。懐かしい雰囲気、かっこかわこわいいですねー。
Courtney Barnett - Nameless, Faceless
第9位 Natalia Lafourcade - Musas: un Homenaje al Folclore Latinoamericano en Manos de Los Macorinos Vol. 2
メキシコのシンガーソングライター、ナタリア・ラフォルカデ(34歳)による、中南米民俗音楽へのオマージュ・アルバム(カバー集)。今年最も再生回数の多かった歌モノとして選出。
情感豊かなギターの上を軽やかに舞うチャーミングこの上ない伸びやかな歌声は、熱情から悲哀まで、大きな感情の振幅を表現するには十分な色彩を備えており、そんな唄によって紡がれるアルバム全体は、ラテンアメリカの乾いた平原でピクニックしながらスプリッツ飲んで呑気に踊っていたら、両翼全長10m以上の巨大なコンドルに誘拐され、上空からの景色を楽しんだのも束の間、じめじめの密林に放り出されて絶望していると、極彩色の花が開いて中からミューズの女神たちが現れ、極楽鳥と幽霊も加わった飲み会が始まり、どんちゃん騒ぎするも、手を出そうとした女神にしばかれて目が醒めたら冷房のきいた部屋のソファで寝ていた、みたいな印象で、南米ルーツ音楽ながら土着的・地霊的などろどろ感や土臭さは、いい按配に薄味処理されており、都会的・現代的なアレンジがとても心地よく、何度も再生したアルバムです。
ちなみに、このMusasはVol.1(2017)もありますが、このVol.2の方が私は圧倒的に好きです。
ぜひ、下の動画の22:30から始まる曲「Derecho De Nacimient」(Google翻訳したら「出産権利」?!)をヘッドフォンで大音量で聴いてみてください。完全に女神が耳の後ろに降臨します。上の妄想もやむ無しということを理解いただけるはずです。
スケベカルロス二エンソ~♪
MUSAS Vol. 2 ALBÚM COMPLETO - Natalia Lafourcade
第8位 Stefano Bollani - Que Bom
今年イタリアに行く機会があったので、事前にイタリア人の作品ばっか聴いて気分を盛り上げたろと思っていたらイタリア人ピアニスト、ステファノ・ボラーニ(46歳)の新作が出ていることに気づき、早速聴いてみたらばなんと大御所カエターノ・ヴェローゾなんかも参加したブラジル音楽集、と思いきやほとんどがステファノ・ボラーニ自身による作曲のブラジル音楽愛に溢れたアルバムでありました。
Stefaano Bollani (piano)
Jorge Helder (double bass)
Jurim Moreira (drums)
Armando Marçal (percussions)
Thiago da Serrinha (percussions)
ステファノ・ボラーニのアルバムは、ECMから出た『Stone in the Water』がとても好きで今でもよく聴きますが、あの静かな湖の水面から飛び立った水鳥が残した微かな波紋のように繊細で壊れやすいメロディを聴かせるピアノ・ジャズとは正反対の、木漏れ日の下で、サングリア飲んでまっせ、あんさんもどう? みたいなハッピーな雰囲気に満ちたアルバムとなっています。歌もあります。
しかし細部に同氏の真骨頂であるポエジーは遺憾なく発揮されており、休日の流し聴きから、深夜のドン聴きまで、幅広いリスニング・アティチュードに対応するスルメ・アルバム。
▼おっさんみんな楽しそう。ブラボー。
Stefano Bollani - Galapagos (QUE BOM single)
第7位 Shai Maestro - The Dream Thief
イスラエル出身の若きピアニスト、シャイ・マエストロ(30歳)のECMデビュー作(リーダー作としては5作目らしい)。
Shai Maestro (piano)
Jorge Roeder (acoustic bass)
Ofri Nehemya (drums)
これを聴くまでこの人のことは全く知らんかったですが、衝撃でした。新しく追いかけないといけないピアニストです。8曲中6曲がシャイ・マエストロ作でどれもこれも素晴らしく天才的。
ジャケットの絵のように、雪に埋もれた森の中の張り詰めた空気のような、ECM総帥マンフレート・アイヒャー印(じるし)の透徹した空気感がアルバム全体に満ち溢れているのですが、同じECMのアルバムに割とよくあるところの、聴いているとこっちが疲れてくるような緊張感ビンビンの圧迫感や重苦しさはまったくなくて、その若さから考えると信じられないような、落ち着き払った余裕のような、リラックスした感じが音を通して伝わってきます。
かと言って、イージーリスニングなピアノジャズではぜんぜんなく、集中して何度も聴くことによって、新しい快楽の瞬間をいくつも発見することのできる奥深いアルバムと思います。私が聴いた中では、今年で最も部屋の空気を変えてくれるジャズ・ピアノ・アルバムでした。続けてECMから作品を出してもらいたいところです。
▼録音の模様が映るPV。プロデューサーのアイヒャーさんが結構笑って楽しそうにしているのが印象的(白髪の人です)。
Shai Maestro - The Dream Thief
第6位 Sarah Davachi - Gave In Rest
カナダ人サウンド・アーティスト、サラ・ダヴァチ(年齢不詳)による瞑想系ミニマル・ドローン・アンビエント。
これはあかんやつです(誉め言葉)。1曲目の「Auster」は、シンセサイザーによる不穏感抜群の低音の暗雲垂れ込めるダークな世界を描き始めたと思ったら、ぷつっと途切れ、2秒後にまた不穏な音が流れ始めるという展開が断続的に続く様は、宇宙人侵略で悲惨な状態になった世界各地の模様が次々と画面に映し出される終末系SF映画のようで、冒頭からダークな世界観にどっぷりと浸かることができます。
しかし聴き進めていくにつれ、上記のダークな世界観は一個人の勝手な思い込みにすぎず、そんな安易な雰囲気系音楽ではないことを思い知らされます。シンセサイザーだけでなく、フルートや合唱までを織り込んで丁寧に構築された夢幻の音世界は、ここではないどこかに連れて行ってくれる系ではなくて、常に目の前にあるが人間には見えない世界の存在に想いを馳せさせてくれる系と言えましょう。
「わけわからん」という方のために具体的に説明すると、日本の古い密教系の寺院の薄暗く静まり返った仏壇で、金メッキを施された錫杖やら香炉やら金キラキンの天蓋に囲まれ、普段神様・仏様を意識して生活なんてしてないのに否応なく感じる、金色の物体の上方に漂う気配、まじで目に見えない何かがすぐそこにありそうと感じる、アノ経験は誰しもあるはずで、寺院や神社、聖堂に行かなくても、これを聴くだけで自分の部屋でそんな非日常的な感覚を楽しめる音楽ということです。決して、暗くはありません(暗いけど)。
学校・仕事に疲れたあなたの心にそっと寄り添い、儚い夢を見させてくれるはずです。
▼アルバムの中で女性の声がフィーチャーされ、最もキャッチーな下の曲「Evensong」を聴いてみてください。オルガンパートが鳥肌ものです。
第5位 Chris Corsano & Bill Orcutt - Brace Up!
恥を知れカスども!
と、誰もいない空間に向かって無性に言いたくなる、そんな作品。
聴いた瞬間、ベストです。
アルバム全編で、アドレナリンとドーパミンの二流体噴射を余儀なくされ、脳が漏れそうになります。
ギターとドラムスのデュオによる、即興パンク・ブルース・フリージャズ・ロック アメリカーナ風味。
結局昔からこういうのが好きで、いまも好きで良かったと心底思えます。
少なくともロックが好きと言うなら全員聴かないといけないレベルの代物です。
(↓)ビル・オーカットさんは56歳です。
ちなみにこの5位以上は、単純に私が聴いた回数で順位付けしているだけです(よって、聴いたのが11月と遅めのこれは5位)。
▼この曲なんか、もうアレ、単純にアルバート・アイラーを思い出しますよね。最高すぎます。 これが本物のロックです。ありがたや、ありがたや。
今年のマイ・ベスト・ソングはこれです(歌ないけど)。
Chris Corsano & Bill Orcutt - She Punched a Hole in the Moon For Me
第4位 Eli Keszler - Stadium
ニューヨーク在住のパーカッショニストで、インスタレーションアートやドローイングも手がける多才なイーライ・ケスラーさん(多分30代)の新作アルバム。
前々作『Catching Net 』がとにかく強烈で、よくわからん感想を興奮気味に以下で書いていました。前作『Last Signs of Speed』も、呪術的な雰囲気のある音楽でかっこよかったですが、ちょっと方向性に迷いがあるのを感じていました。
しかし今作は、私生活でブルックリンからマンハッタンに引っ越したことによる影響か、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never)への参加の影響もあったのか知りませんが、いままでとかなり異なる、だが紛れもなくイーライ・ケスラーにしか作れない新しい音楽を提示してくれました。
トレードマークの高速パーカッションは健在ながら、使われる楽器の種類が増え、冒頭を飾る『Measurement Doesn’t Change The System At All』は、いきなりめっちゃ軽やかで、湿り気はあるけどまったく感傷的ではない猛烈にクールなジャズっぽい音になっていたのに驚きました。
全体的に、飛行機の窓から大都会の街並みを観察しているときの、自分と地上生活の間の隔絶した感覚を音にしたような、ちょっとなに言ってるかわからないですが、そんな感じの言葉にできない感覚を味わえるアルバムということです。
レコードカバーに印刷された、Laura Kennerという人による現代詩(?)が渋いです。
これまでのイーライ・ケスラー氏の作品の中では最高傑作と言えるでしょう。
▼ニューヨークのThe Kitchenでの高解像のライブ・ビデオがYouTubeに上がっていました。このアルバムをライブ演奏すると、またアルバムとは違うかっこよさ。長いので試しに14:30くらいから数分聴いてみてください。神がかっております。太鼓のイーライだけにまじ雷神。
Eli Keszler — Stadium (Live at The Kitchen - Oct. 2, 2018)
第3位 Jim O'Rourke / Sleep Like It's Winter
アメリカ出身で現在日本在住のジム・オルークさん(49歳)は、私と誕生日が一緒で、ニューヨークのTonic(今は亡きライブハウス)で会ったときのあの優しい人柄の思い出や、心斎橋のロフト前で偶然会った妙な縁などから、勝手に愛着を抱きまくっています。
2015年の歌ものアルバム『Simple Songs』に続く最新の完全ソロ作は、ここ数年で録り溜めた、シンセサイザーやピアノ、ペダルスティールの音をひとつの作品としてまとめたという、1曲約45分のインストゥルメンタル・アルバムということで、否が応にも傑作『Bad Timing』(1997)、『The Visitor』(2009)のアメリカーナな系譜を次ぐアルバムかと色めき立って聴いてみたら、全然違いました(いい意味で)。
ジム・オルーク氏のロック・ポップス系の作品が、ポップなんだけどどこかひねくれて危険な感じがあるのと同様、本作もぱっと聴くとアンビエントなんだけど、決して流し聴きできるような生半可な作品ではありません。
1995年の傑作ダーク・アンビエント(?ジャンル分け不可能)『Terminal Pharmacy』の暗いけど心地よい世界に、あれ以降の作品のたとえば『I'm Happy and I'm Singing and a 1, 2, 3, 4 』(2001)のエレクトロニカや、『みずのないうみ』(2005)のドローン要素、『The Visitor』の生楽器の断片が組み合わさって、同時にそれらにはそれほど備わっていなかった、ちょっと雅楽っぽい、典雅で優雅な雰囲気も多分にあって、またもやジム・オルークの作品としか言いようのない、ジャンル分け無用の新しい音楽が結晶化したような趣きです。
聴いていると、次々と変転していく音のすべてを聞き逃すまいと集中している自分がいました。
音楽理論に従い作曲されて録音された音楽に自分の感情をシンクロさせて「いい!」とか「感動した!」とかいう以前に、音自体がそこにあって問答無用で、こちらの精神を上書きしてくるような、もしくは自分の経験を参照するのではなく、聴くこと自体が新体験となるような音楽作品こそが真の傑作であって、本リストの5位以上はすべてそうした要素を少なからず持っています。
▼大阪万博2025のテーマソングにするべき、全人類のシナプスに秘められた共感覚の秘密の扉を開けた先の世界を活写するかのようなスケール感(適当)。
Jim O'Rourke - Sleep Like It's Winter
第2位 Mark Turner Ethan Iverson - Temporary Kings
テナーサックスが木管楽器であるという超当たり前の事実を改めて意味なく強制的に再確認させられるような、なめらかでスムースでウッディでドリーミーだけどシラこくない極上の音色を出すマーク・ターナー氏と、ピアニストのイーサン・イヴァ―ソン氏のデュオ・アルバム。
以前から、とにかくマーク・ターナー氏のサックスの音色が好きで好きでたまらなく、本アルバムは、そんな音色が蝶のように舞う様を、アルバム全編を通して楽しむことができます。
私にとってはこのアルバムが現代ジャズ的にどうとか言う以前に、(大半の曲を作曲しているのはイーサン・イヴァ―ソンの方とはいえ)単純にマーク・ターナーの音色を数十分間堪能できる至福の一枚。
流麗で手を伸ばすと逃げていくようなメロディが、感傷的に過ぎず、都会的なんだけど、とても暖かみのある音色。
同じことばっか言ってますね。しかしそれくらいサックスの「音」が魅力的なのです。
マーク・ターナー氏のアルバムは全部聴いたわけではないですが、こんなアルバム過去にはなかったんじゃないでしょうか。
当然アナログ盤を購入し、仕事から帰宅した夜はしばらくこればっか聴いていました。
▼いいビデオがYouTubeになかったので、マーク・ターナーの夢のようなサックスの音色が一瞬だけですが聴けるiTunesストアのリンクを張っておきます。下の2曲はとにかく素晴らしいです。もちろんピアノも。
第1位 Shinichi Atobe - Heat
そして第1位は、アルバム通しで聴いた回数ぶっちぎりでナンバー1、世界のShinichi Atobe(跡部進一)様の4thアルバム『HEAT』です。
もう今年はこれですね。数年後にこれを聞いたら、2018年にやっていたこと、空気感をまざまざと思い出すことでしょう。
ダブ・テクノというのか、ミニマル・ハウスというのかどうでもいいですが、ミニマルな反復するビートに、シンセサイザーのコードが乗っていくとなると、ありがちなようでいて、このストイックな感じと清潔感は100回聴いても飽きません。
1曲目の「So Good, So Right」はタイトルそのまま最高にクールで、聴けば日頃のイヤな気分を忘れさせてくれるというか、自分のまわりの人間関係のごちゃごちゃを俯瞰する視点と翼を与えてくれます。
アルバム・タイトルになっている「Heat」は「Heat 1~4」という4つの変奏というか異なるバージョンがあります。
「Heat 2」はリカルド・ヴィラロボス的なファニーな感じがたまりませんし、「Heat 3」は一転不穏感漂うミニマル・テクノ。
白眉は「Heat 1」で、アフロビートっぽいトラックにメランコリックなシンセサウンドが乗って心地よいなーなんて、5分過ぎたあたりから、私には延暦寺かどっかの声明に聞こえる「アーーーーーーーーーーーーーーー」という喉の震えサウンドが流れてきて完全に現実をシャットアウトできます。
ほかにもピアノループが心地良い「Bonus」もリフレッシングですし、最後に収められた「So Good, So Right 2」も、冒頭とは異なる浮遊するようなミニマル感によだれが垂れます。
全曲最高です。
私はこれが発売されたとき、限定のオレンジ・ヴァイナルを明日買おうと思ってその日は寝たら、次の日の朝には売り切れてて買えませんでした。
そしたら先日、Boomkatの2018ベスト・アルバム・プチ再発みたいな企画で、このアルバムのまたもや限定パープル・ヴァイナルが出ていたので、今度はソッコーで注文しました。まだ届いてませんが楽しみ。
下にあるように、YouTubeでもSpotifyでも全曲聴けてしまうのですが、これはアナログ盤で所持して家宝としたい珠玉のアルバムです。
▼飽きへんなー。
Shinichi Atobe - Heat (Full Album)
以上。
2018年(平成30年)マテリアライズド的アルバム・ベスト10でした。
最後に、1位から順番にアマゾンのリンクをまとめて張っておきます。

- アーティスト: Bill Orcutt / Chris Corsano
- 出版社/メーカー: Palilalia
- 発売日: 2018/11/01
- メディア: LP Record
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- アーティスト: ステファノ・ボラーニ,カエターノ・ヴェローゾ,ジョアン・ボスコ,ジャキス・モレレンバウム,アミルトン・ヂ・オランダ,Stefano Bollani,Caetano Veloso,Hamilton de Holanda,Jaques Morelenbaum,Jo o Bosco
- 出版社/メーカー: SONG X JAZZ Inc
- 発売日: 2018/06/20
- メディア: CD
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Musas (Un Homenaje al Folclore Latinoamericano en Manos de Los Macorinos), Vol. 2
- アーティスト: Natalia Lafourcade
- 出版社/メーカー: Columbia
- 発売日: 2018/02/09
- メディア: MP3 ダウンロード
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![Tell Me How You Really Feel [解説・歌詞対訳 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤 /先着特典ステッカー付] (TRCP230) Tell Me How You Really Feel [解説・歌詞対訳 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤 /先着特典ステッカー付] (TRCP230)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/410SYM5FnbL._SL160_.jpg)
Tell Me How You Really Feel [解説・歌詞対訳 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤 /先着特典ステッカー付] (TRCP230)
- アーティスト: Courtney Barnett,コートニー・バーネット
- 出版社/メーカー: Traffic / MilK! Records
- 発売日: 2018/05/18
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![Collapse EP [日本盤CD/通常盤 (解説付/先着特典マグネット付/オリジナル・ステッカー封入] (BRE57) Collapse EP [日本盤CD/通常盤 (解説付/先着特典マグネット付/オリジナル・ステッカー封入] (BRE57)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/61UYDZ1lSUL._SL160_.jpg)
Collapse EP [日本盤CD/通常盤 (解説付/先着特典マグネット付/オリジナル・ステッカー封入] (BRE57)
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- 出版社/メーカー: BEAT RECORDS / WARP
- 発売日: 2018/09/14
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ちなみに蛇足
そういえばヒップホップがひとつもありませんね。積極的に情報も収集してないこともあり、ほとんど新しいものは聴きませんでした。
カニエ・ウェストとキッド・カディのデュオ『Kids See Ghosts』の1曲目はなかなかにフリーダムで衝撃的でしたが、ベスト10入りはせず。
なお、新作ではないですが、今年はタリブ・クウェリとケンドリック・ラマーそれぞれの未発表曲とかB面曲を集めたアルバム(2015~2016)を買い、その2枚ばっかり聴いてました。どちらも派手さはないですが、中毒性があります。聴いた回数は上のベスト10にも劣りませんでした。

TRAIN OF THOUGHT: LOST LYRICS, RARE RELEASES & BEAUTIFUL B-SIDES VOL.1 (直輸入盤帯ライナー付国内仕様)
- アーティスト: TALIB KWELI,タリブ・クウェリ
- 出版社/メーカー: JAVOTTI MEDIA
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- 番外 Aphex Twin - Collapse EP
- 第10位 Courtney Barnett / Tell Me How You Really Feel
- 第9位 Natalia Lafourcade - Musas: un Homenaje al Folclore Latinoamericano en Manos de Los Macorinos Vol. 2
- 第8位 Stefano Bollani - Que Bom
- 第7位 Shai Maestro - The Dream Thief
- 第6位 Sarah Davachi - Gave In Rest
- 第5位 Chris Corsano & Bill Orcutt - Brace Up!
- 第4位 Eli Keszler - Stadium
- 第3位 Jim O'Rourke / Sleep Like It's Winter
- 第2位 Mark Turner Ethan Iverson - Temporary Kings
- 第1位 Shinichi Atobe - Heat
- ちなみに蛇足