先日、超ひさしぶりにヨーロッパに出張し、某国で行われた国際会議で発表する機会がありました。
というわけで、スピーチにおいて気をつけるべきことと、よく使うフレーズをいくつか紹介しておきます。
同様のネタはネットにいくらでもあるので、あたりまえのことばかりかもしれませんが、本シリーズの中にも思いつく限り加えておきます。
なお、以下の記事でも一度、よく使う表現を取り上げました。本記事はそれへの補足となりますので、併せてご覧いただければより参考になるかもしれません。
心構え1:堂々と立ち、体をあまり動かさない
海外でのプレゼン、それも大勢の聴衆の前でのスピーチは、どうしても緊張するものです。
緊張すると落ち着きをなくし、聴衆から憐れみに似た感情の視線というか、すべての微笑みが嘲笑に見えてしまい、余計に緊張してしまうということがあります。
私は一度、緊張しすぎてレーザーポインターをぶんぶんに振り回して、赤い光点をスクリーン上で蝿のように飛び回らせている日本人発表者を見たことがあります。
あれでは聞いている方も、内容に集中できません。たぶん本人は、落ち着きをなくしているので、ほぼ無意識で腕を振り回していたと思います。
そういうことのないように、とにかく演題に立ったら、胸を張って、「しゃべってやる」くらいの心持ちで、多少英語を間違ったり、自分でなにを言っているかわからなくなっても、体はあまり動かさず、「なんなん俺の言うてることわからんの? アホちゃう?」みたいな不遜な態度で(あくまでイメージ。顔は基本笑顔で)、しれっと根拠なく堂々としている方が精神衛生上ベターです。
以前も別記事で書きましたが、多くの日本人の下手な英語って、多くの外国人に実際に下手とは思われていますが、だからと言って馬鹿にしているといったことはあまりないので安心して良いです。
英語が下手なことを直接的に馬鹿にしてくるアメリカ人やイギリス人には何度も会ったことがありますが、それはプライベートな場が多かったです。
英語を母国語としない人たちが混じり合うビジネスの現場においては、当然当事者間では交換する情報の中身が重要で、英語を馬鹿にする前に、コミュニケーションを取りたいと思っている人の方が多いです(いまのところぎりぎりで日本人の好感度は高い方なので)。
というわけで以下につづく。
心構え2:目を見てくれる人を何人か決めて、順番に見ていく
英語が下手だと、どうしても「ほんまに俺の言ったことわかってくれてるんかいな?」と心配になってきます。
後ろの方であからさまに寝てるおっさんおるし、やばい、みたいな。
しかし、あなたが演題に立ち、前に聴衆がいる限り、あなたが言おうとしていることをわかろうとしてくれている人たちは必ずいます。
そういう人たちとはたいてい目が合います。
プレゼン中は、できるだけ早めにそういう目が合うひとを数人見つけて、しゃべっている間は、そのひとたちを順番に見ていくことをおすすめします。
そうすることで、スマートフォンをいじってばかりいる人や、めっちゃ暇そうに鼻くそほじってる人や、口開けて寝てる人を見てしまい、「うわっ、誰も聞いてないやん!」などと落ち着きをなくすことなく、数人と順番に対話しているかのようにスピーチを行えます。
目が合うひとはちゃんと聞いてくれてて、かつわかってくれている感じがするので、緊張を緩和することにつながります。
これが難しければ、いっそのこと、同僚の日本人に会場の真ん中あたりに座ってもらい、その人に対して目線を合わせつつ、ときに全体を見渡すくらいにしてもよいかもしれません。
当然ですが、ずっと下向いたまま原稿読むだけのスピーチほど、聞いている方にとって苦痛なものはありません。
心構え3:「so」「I mean」は絶対に言わない
ある程度英語がしゃべれるようになってくると、会話において「so」や「I mean」で言葉を継いだりします。
ただし、これは正式なスピーチでは避けた方がよいです。
とくに「so」(だから=つまり=ていうか)は、英語が下手な場合に、沈黙を回避するために、ついつい口を付いて出てきますが、聞いてる方からすると非常に稚拙な印象を受けます。「so」を言いたくても、ぐっと我慢して、なにも言わずに次の文章をしゃべった方がよいです。
落ち着きをなくすと、「so」はほとんど口癖のように出てしまうので、「so」の我慢。これは常に意識しましょう。しゃべっている途中に「so」をゼロにすることはかなり難しいですが。
また、「I mean」(私が言いたいのは=つまり=ていうか)は少しこなれた感じはしますが、これもスピーチで使うと稚拙な印象につながるので避けましょう。ちょっと冗談っぽくしゃべるときはもちろん例外です。
心構え4:「I think」はできるだけ言わない
「I think」も避けるべきです。
とくに学術的な国際会議で発表する際などは、「I think」はほとんど禁句かもしれません。
モノを主語にした、静的な文章をこころがけて、事実を淡々と述べるべきです。
私の記憶違いかもしれませんが、日本の義務教育の英語の授業で、「英語ではフツー、モノを主語にしない」なんて習ったような気がします。
しかしこれは大きな間違いです(私の勘違い?)。
スピーチでは、モノを主語にしたしゃべり方を徹底したほうが絶対に良いです。
以前の記事でも書きましたが、「The data shows (that) ~」とか、「This slide illustrates that ~」「The results represent that ~」等です(「I」や「you」が出てこない論文と同じですね)。
「このスライドは示します。なになにを」という話し方になるよう文章を組み立てることで、スピーチのクオリティは一気に上がります。
心構え5:講演終了時に「Thas't it」「That's all」とは言わない
スピーチの最後に、「Thas't it」とか「That's all」とか言ってから「Thank you for you attention」などという人を何度も見かけたことがありますが(私も言ったことはあります)、これも避けるべきです。
とてもダサいです。
先日の国際会議でひさびさに欧州の人たちの講演をたくさん聞きましたが、誰も「That's it」とは言いませんでした。
締めになんと言えばよいか。
これはもう単純に「Thank you」でよいです。
これで自然と拍手が起きてスピーチを終えることができます。
「It conludes my presentation. (2秒)Thank you.」なんて落ち着きはらって言うと、いい感じです。

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小ネタ
最後に、小ネタを
パワーポイントを使ってプレゼンをするとき、自分では次にどんなスライドが続いていくかはわかっていますが、聴講者はわからないことが多いです(いくら最初に全体像を見せても途中で忘れます)。
しゃべる内容を頭の中に準備して、どれだけ練習しても、本番では聴講者は置いてきぼりになる可能性があります。
このため、プレゼンのスライドの各所で、以下のように言うといい感じです。
In the next few slides, I am going to show you the results of this study.
これからお見せするスライドでは、今回の実験の結果をお見せしていきます。
このように言うことで、聴講者は次にどういうことが話されるのか予想することができて、プレゼンについていきやすくなります。
一旦、話についていけなくなったプレゼンは、自分に照らして考えてみても明らかな通り、その時点で集中力を失ってしまいますので。