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仕事中に英語の汚い言葉を使う時の注意点:いい感じのビジネス英語(40)

英語の勉強になる(ならない)映画『The Lighthouse』を観てきた

先週末、シンガポールの映画館『The Projector』で、ロバート・エガース監督作『The Lighthouse』を観てきました(初上映は2019年5月カンヌ映画祭)。

The Lighthouse [Blu-ray]

1890年代のニューイングランド ー 此岸と彼岸の境目にあるような曖昧な存在に見える常に曇り空の孤島の灯台に派遣された若手とベテランの2人が、過酷な灯台維持管理業務を続ける内に、幻覚を見る(主にパワハラ被害者側の若手が)などして、徐々に狂気に陥っていくという話。

そこにギリシャ/ローマ神話のモチーフ(セイレーンやネプチューン、プロメテウス)をオーバーラップさせて、弱くて惨めな人間のしんどさをあぶり出すなんて言うと、ほぼ正方形の狭いモノクロ画面と相まって、なんとなく辛気臭くて退屈なアート映画かと思われるかもしれませんが、まったくそんなことはありませんでした。

クトゥルフ神話の要素も適度に織り交ぜて娯楽性も十分。

ホラー映画かと思ったら、スプラッター度は割と低く、えげつないカモメ惨殺シーンもブチギレた人間の暴力性の常に哀しい滑稽さを描こうとしているように見えて怖くなくなりますし、ほかにも誰もが夢見る幻想的な人魚シーンや、灯火を出射するサイケデリックな巨大レンズの映像など、かっこいい絵の連続です。

さらに、徐々に気が狂っていくのに合わせて、主演のロバート・パティンソンとウィレム・デフォーによるテンションの高い熱演が途中から加速するので、最後までまったく退屈することなく観ることができました。

予告編を見て、あまりに普段聞くものと異なる訛りの強い英語にちゃんと内容わかるか不安になりましたが、ちゃんと英語字幕を付けてくれていたので助かりました。

それでも日本語字幕付きでもう一度じっくり観てみたいと思わせると同時に、人前で屁をこくときはまじで気をつけようと強い自戒を促す強力な作品でした。

なお、なかなか爽快な罵詈雑言の数々は、オンラインに台本が上がっており、読み返すことで英語の勉強になります(例:86ページ)。

▼The Lighthouse 台本PDF(ネタバレ注意)
https://www.scriptslug.com/assets/uploads/scripts/the-lighthouse-2019.pdf

 

英語の汚い言葉を使うときの注意点

さて、「勉強になります」とか白々しく言ってみたところで、今回の本題につながります。

英語を勉強して少し慣れてくると、ついつい調子に乗って所謂ダーティ・ワードを使ってみたくなるのが人の性です。とくに留学経験のある人などは、ちょっとしたすきにFワードが口を付いて出てしまうことがあります。

それは仕方ないし、意外とそういうダーティ・ワードはとっつきやすいので、英語を勉強する息抜きにそういう言葉を調べてみるのも、良いとは思います。

しかし、ビジネスの顧客相手の会話やメールでの使用は絶対に避けるべきです。

それは当然としても、たとえ仲の良い同僚との仕事中の雑談で使う場合にも注意すべきことはあります。今回は意外と日本人が気づかない落とし穴的な事例を紹介します。

1. 日本人が思うより強い意味を持つ

先日、たまたま電車で隣に立っていたアメリカ人と思われるティーンエイジャーの3人は、それがかっこいいと感じる年頃なのでしょう、ほぼすべての名詞の前に「Fxxkin'」を付けて得意そうに話していました。

そういう言葉は、ドラマ映画のオフィス内の場面などでもしょっしゅう使われているのを聞くと思います。だからと言って、日本人が安易に真似をするのはよろしくありません。

まず、元の単語は結構きつい意味を持ちます。ご存知のように、普段の会話では男も女もめちゃくちゃ使うのに、テレビではピー音が入ることからも、それがどういうことかわかると思います。

それからもうひとつ重要なのは、発音とイントネーションが完璧でないと極めてダサいということです。

発音はしやすい単語ではありますが、英語のたいしてうまくない日本人が調子に乗って発言している場合、だいたいほとんど日本語の「キッチン」みたいな抑揚です。クソダサい。

使うときの正しいイントネーションは、「キッチン」ではなく「雪隠」に近いです。

さらに発音時はちゃんと下唇を軽く噛むようにする必要もあります。

また、映画などでも、友達に対して冗談っぽく「Fxxk you!」と言ったりするのをよく聞きます。これは実際に日本語の「アホか!」というような意味合いでよく使われます。

これを気軽に真似して「ふぁっきゅー」なんて発音してもダメです。冗談っぽく言う場合はたいてい、「ふぁっきゅー」ではなく「ふぁっく・ゆー」の方が適切、というか冗談ぽさが増すのですが、それを知らない日本人ビジネスマンが結構多いです。

これも強い意味を持つ表現ですので、使い方の発音、タイミングを間違えば、一気に相手との関係性が壊れかねません。

よって、仲の良い同僚・友達が相手でも、上記のニュアンスを知ったうえで、使いましょう。お互いに汚い言葉を使ったほうが親近感が強まるということもありますので。

2. 人種・国籍が変わるとシャレの感覚も変わる

黒人同士ではしょっしゅう使われるのに、白人やアジア人から黒人に対して言えばシャレにならん単語があるように、人種・国籍が異なると、言葉から受け取られる意味・感覚も変わってきます。

同様にシャレの感覚も変わりますので、日本人がシャレのつもりで言ったことがシャレにならんこと(パワハラ等)になることもあり、注意が必要です。

この例は汚い言葉ではないですが、「Good morning」(おはよう)とメールに書く代わりに、その日は朝からクソダルいことがあったため、「Bad morning」と冗談めかして書いたとします(なにか言ってくれるのを僅かに期して)。

英語を母国語としない日本人同士や、かなり仲の良い同僚ならしょうもないシャレで通じますが、基本的に「Good morning」は「Good morning to you」であり、「Bad morning to you」となると、「最悪な朝をあなたに」という意味合いの言葉になって、一気に超失礼な表現になります。

日本語の「おはよう」は元の意味からやや離れた朝の決まり文句的な言葉のため、「グッドモーニング」も同様に考えてしまいがち。しかし「Good」とか「Bad」という言葉は、英語ネイティブのひとにとっては(多分)瞬間的に言葉としての意味が頭の中に入っているということを忘れてはなりません(あ、でもFワードは違うな。あれはたぶん音がみんななんとなく好きなんだと思います)

3. 自虐ネタによるギャグが通用しないことがある

たしか落語家の誰かが以前(たぶん立川談志だが確証がない)、「自虐ネタを披露したり、それを楽しめたりする日本人のギャグセンスは、世界的に見て最先端」といったような意味のことを言っていました。

どんな根拠かわかりませんが、たしかに日本人は自虐ネタが好きです。

また、日本人ビジネスマンは自分を卑下して(もしくはわざとおちゃらけて)相手を立てる、喜ばせるということにも慣れているように思います。

これが当たり前の感覚のまま、世界の人を相手に仕事する際、英語で「ハゲ」とか「臭い」などの自虐ネタを使うと、かなり恥ずかしいことになる可能性があることも知っておくべきです。

例えば、中国系のひとは、割とプライド高めなので、私などが自虐ネタを披露すると、たまにまじで「信じられない」と言ったシラけた顔をされることがあります。

南インド系ですと、1ミリもギャグがギャグであることをわかってくれない場合や、逆にこちらを心配しているよう表情を見せたりすることがあります。

自虐ネタで笑かそうとしても、笑いではなく、失笑しか生まれなければ、それは恥のかき損というものです(毎回かならずではありませんが)。

よって、ビジネスの商談などで、相手の機嫌を取ろうと自分を卑下するような態度をとると、まったくの逆効果、「自信がないやつ」=「商品もろくでもないやろな」という印象をもたれることがあり、注意が必要です。

私の個人的経験では、アラブ系/北インド系のひとが、自虐ネタを絶対にしてはいけない相手だと実感しています。これらの人々を相手にするときは、基本的にこちらも常に堂々としている方がなにかと良いし、信頼感も生まれやすいと思います。下手に出ると、色んなところで、つけこまれやすいです。これはだいたいどこも一緒か。

4. 差別はダメ、絶対

最後に、人種・男女差別的な表現は、絶対にダメです。世界の人々を相手に仕事をしていると、日本人の常識では信じられないようなことを平気でする人間に出くわすこともしょっちゅうです。時間・約束を守らないのは日常茶飯事で、平気で嘘をつく人間もいます。

だからと言って、人種などを一括りにして差別的なことをしゃべるのはダメです。

歴史も文化も、受けてきた教育も家庭環境もまるで異なる人間を相手にするときは、そういった一括りの理解をしてしまうことは、クソの役にも立たないどころか、ビジネス上の弊害でしかありません。

色々むかつくことはむかつきますが「それはそいつだけ、全員じゃない」という意識を常に持とうとしている方が精神衛生上よろしく、ビジネス上も良い結果を生みやすくなることは間違いありません。

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