以前上げた小さめ防水時計のまとめ記事が何気にアクセス多く、2021年夏に向けて、久々に更新します。何を隠そう、あれからもうすぐ3年経ちますが、いまだに購入には至っておりません。
今回の選択基準は以下の通りです(例外ちょっとあり)。
- 防水性能が200m/20気圧以上であること
- ケースの直径が38 mm以下であること
- 機械式であること
- 現在(2021年3月)新品で購入可能なものであること
少し補足すると、上記1は、プールや海での水泳における安心感(自己満足感)を得るためで、実際は100m/10気圧防水でもプールに入るくらいは大丈夫です。
上記2は、昨今の風潮においてはともすれば小径とも言われる39 mmや40 mmでさえ、時計の縦幅が、斜めからパッと見て腕の幅を越えている、もしくはズレた時に浮かんでいるように見える人が私も含めて結構多いため、さらに小さいものに拘りました。
上記3は「G-Shockでいいのでは」という合理的な内面の声に打ち克ち、この世知辛い世の中においてあくまで情緒的なるものを追求するため。
上記4は、防水性能はパッキンの経年劣化などで落ちます。本当に水の中で使うなら、新品で買った方が安心なため。
というわけで、記事タイトルに「ダイバーズ」と入れているにも関わらず、いわゆる本物のダイバーズウォッチがほとんどリストにないことは悪しからずご了承ください。
防水性能の高い小さめ時計の紹介です。実をいうと、回転ベゼルの付いたごっつい時計はあまり好みではなかったりします。
リゾート地のホテルにチェックイン、カバンは部屋に届けてもらって、部屋には行かずに時計着けたままプールに直行、いきなりロングヴァケーション。そんなシチュエーションをイメージして、ここにある時計を選びました。
- セイコー 1959 アルピニスト現代デザイン SBDC145(38 mm)
- マラソン Medium Diver's Automatic(36 mm)
- オリス アクイス デイト ダイヤモンド(36.5 mm)
- ユニマティック U2-F(38.5 mm)
- ノモス クラブ ネオマティック(37 mm)
- ロンジン レジェンドダイバー MOP(36 mm)
- タグホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル 300(36 mm)
セイコー 1959 アルピニスト現代デザイン SBDC145(38 mm)
いきなり潜水向けではなく登山向けで「お前のキモいイメージと全然違うやないか」という声が聞こえてきそうです。
セイコーは言わずと知れた日本が誇る時計メーカーの一つ。
最近はグランドセイコーを別ブランドとして分離するなど、日本市場よりも世界市場に重きを置いていることは明白で、そのせいか34〜36 mmの機械式時計はほぼなくなってしまいました。
35 mmでは小さすぎると感じる日本人が増えているのも事実かもしれません(個人的には丸太みたいな腕をしたスイス人やドイツ人が35 mm付けてもクラシックでかっこいいと思うんですが)。
とはいえ、先日セイコーから発表された1959 アルピニストの新製品は、セイコーもついに小さめ時計に回帰してくれるのか! と期待が持てるものでしたので最初に紹介。
しかし残念ながら、新しい薄型ムーブメント「6L35」を搭載した復刻デザイン 36.6 mmの方がどう見てもかっこいいにも関わらず、防水性能は10気圧とのこと(残念)。さらに1959本限定。
一方の現代デザイン 38 mmの方は、20気圧防水となっていました。
しかし、復刻デザイン 36.6 mmのデザインの説明において、12時、3時、6時、9時に配した大きな楔型インデックスが盤面に構成する見えない十字線を強調しておきながら、現代デザイン 38 mmの方では、3時位置に日付窓を開けているのが個人的にややマイナスポイント。
搭載している旧型6Rムーブメントの都合なのかもしれませんし、デイト表示の根強い需要もわかりますが、オリジナルデザインの優れた点を損ねているように感じます。
ともあれ、この現代デザインは、復刻デザイン(30万円)よりもだいぶお手頃価格なので、セイコーなら前回紹介した「SKX 013」よりもこっちの方がいいかな、と思い始めています。
1959 アルピニスト現代デザインモデルは、文字盤の色がアイボリーのSBDC145が最も古風な感じで好み。黒と緑もあります。
ステンレスベルトを、ベージュかブラウンのレザーストラップに変えたりすると、いわゆるコロニアル・スタイル的な雰囲気が出て良いかもしれません。
2021年8月発売予定。82,500円(税込)
マラソン Medium Diver's Automatic(36 mm)
Marathonは、カナダに移住したロシア人が設立した時計メーカー(1939年創業。前身は1904年)。ミリタリー時計が得意で、ベトナム戦争や湾岸戦争では米軍にも時計を供給していたそうです。
やや地味なブランドながら、硬派な小さめダイバーズウォッチを現在も販売している貴重なメーカーです。
Medium Diver's Automatic 36 mmは、文字盤が白と黒の2色展開。なぜか上の日本語ウェブサイトには載っていませんでした。下記ページでは今でも買えます。日本の販売店リストは、上の日本語サイトに掲載されています。
Arctic Edition Medium Diver's Automatic (MSAR Auto) - 36mmeu.marathonwatch.com
価格は約10万円(現在セール中の模様)。
ガラスから文字盤までの距離がかなりあって(深い)、なかなかにワイルドな印象です。でも36 mm。
アワーマーカーには光るトリチウムチューブを使っており、放射能マークが3時表示左側に小さくプリントされているのも面白いです(もちろんこれは安全基準に則っているというマーク)。
搭載ムーブメントのMarathon M2は、セリタ SW200ベースです。
小さいダイバーズ時計が欲しくて、かつ、絶対に回転ベゼル付きがいい! でも出費はできるだけ抑えたい! という方は、2021年現在、これ一択ではないでしょうか。次に紹介するオリス アクイスの36.5 mmの実物は、ややフェミ二ンな印象がありますが、こちらは小さいのにマスキュリンな見た目なのではと思います(実物見たことないけど)。
以下に長文の深掘りレビューがありますので参考にしてみてください。
オリス アクイス デイト ダイヤモンド(36.5 mm)
オリスは1904年創業のスイスの老舗腕時計メーカー。
ここしばらくは他社製のムーブメントを改造して使っていたものの、最近は自社製ムーブメントを製品に投入。今後の展開に期待しています。
オリスは昔からダイバーズウォッチを数多く手がけており、防水時計パイオニアの1社とも言えると思います。
現在は「Aquis」「Divers」「Pro Diver」という3つのラインがあります。そのうち「Divers」ラインには、1960年代のデザインを復刻した「ダイバーズ65」というモデルが36 mmでかなりナイスなんですが、残念ながら防水性能は10気圧です。
一方、「Aquis」ラインは、全てのモデルが、300 m防水で、レディースモデルには36.5 mmのものがあります。
前回も紹介した「Aquisデイト」は2021年3月現在、39.5 mmが最小で、36.5 mmのものは、ダイヤモンド付きのフェミニンなデザインのものしかないようです。
男でもダイヤモンド付きの時計を着けるべきか、死ぬべきか、それが問題。
それは個人の趣味嗜好思想信条性癖だけでなく、その人のもつ、如何ともし難い雰囲気にもよるでしょう。私が着けると、外野からは「キモい、死ぬべき」と言われるのは目に見えています。
しかし、白のリネンシャツと白の短パンを履いて、白文字盤で白のベルトで小ぶりなダイヤモンドがキラッと輝くこの時計をプールサイドで嫌味なく着けられる、そういう人間に私はなりたい。
男でレディース・ウォッチはどうなのとか、ボーイズサイズは女々しいとか言う人もいますが、そもそも「男」がどうとか言うなら、そんな細かいことを気にしないのが「男」であって、これをサッパリ洒脱に歌舞いて着けこなせる人もいるかと思い、ここに紹介しておきます。
自社製ムーブメントはこれにはまだ搭載されておらず、セリタ SW200-1ベースの自動巻Oris 733です。
深い青色の文字盤で、ベゼルにダイヤモンドが敷き詰められたものもあります。
女性には普通におすすめできます。
これ見よがしなロレックスのダイヤ付きではなく、あえてこんなシリアスで綺麗なオリスの腕時計を着けた水着女性がいたら、目が釘付けになることでしょう。
ユニマティック U2-F(38.5 mm)
ミニマルデザインな時計を限定商法で売るイタリアの新興時計メーカー、UNIMATIC(ユニマティック)。
他社製のムーブメントを搭載してコストダウン、機械以外のデザイン(設計)で勝負しているいわゆる「マイクロブランド」の一つで、数多あるファッションウォッチとは一線を画する硬派な性能を備えた時計を主にオンラインで販売しています。
Unimatic has created a unique design language, but is that enough? - Unimatic U2-F Review - B&B
40 mmサイズが多いコレクションの内『U2-F』は38.5 mmと比較的小さな時計です。
「フィールドウォッチ」とされていながらも、本格的な30気圧防水性能を備えています。搭載の機械はセイコーの自動巻NH35A。
マイクロブランドのダイバーズウォッチの多くは、ロレックスのサブマリーナを真似したようなものが多い中、そんな安易な模倣に陥らないユニークなデザインには好感が持てます。
ステンレスの塊から削り出したかのような無骨なケースは、金属フェティシズムを刺激するマテリアル感がある一方、横から見るとぷくっと餅のように膨れた形状がなんとも可愛らしい。昔の漫画に出てくるような潜水艦も連想させます。
小さめ防水時計を探す人にとっては、性能は十分、見た目もユニーク、価格も500ユーロ(約52,000円)と比較的安価なため、良い選択肢の一つではないでしょうか。
500本限定。2021年3月現在、まだ買えそうです。悩む。直に売り切れると思いますが。
製品ページはこちら(↓)。
https://www.unimaticwatches.com/u2-f/
ノモス クラブ ネオマティック(37 mm)
続いては、ドイツはグラスヒュッテの腕時計メーカー、ノモス(NOMOS)から、クラブ ネオマティック(Aquaシリーズの一つ)。
ノモスは今では数ある高級時計メーカーの中にあって、実にクールな立ち位置を占めるようになったと思います。いきった感なく一目置かれる感じ?
基本的にどのモデルもバウハウスの流れを汲むシンプルなデザインが特徴。
シンプルと言っても退屈さはなく、作り込みもよく、おまけにムーブメントは全て自社製になりました。
価格は多分にもれず上昇傾向にあるとは言え、まだそこまで高くはなく、機械式時計を初めて買う人にとっては、どれを選んでも間違いのない1本を提供してくれる素晴らしいメーカーです。
そして33 mm〜37 mmの小さめ時計も継続して作ってくれているのが嬉しい。
そんなノモスには、回転ベゼル付きのダイバーズウォッチはありませんが、防水性能200mの時計はいくつかあります。
前回の記事ではモデル「Ahoi アトランティック」(↓)を私の本命として紹介しました。
しかし店で実物を手に取って見るとどうもビビッとくるものがなく、逆にビビッときたのがClubラインのAquaシリーズの中のこれ(↓)、クラブ ネオマティック(白文字盤)でした。
Nomos Club Neomatik | Timepiece Chronicle
やっぱりええもんですね。これは。
ブルーに蛍光オレンジという絶妙な色使い、丸みを帯びたベゼル、細かい同心円模様入りのスモールセカンドの安定感、滑らかかつ無骨なラグ、ケース側面の平面性、全てが見事に調和していて、古くて新しく、新しくて古いタイムレスなデザインだと思います。
37 mmという大きさもちょうどいいし、自社製の自動巻キャリバーDUW3001は高さ3.2 mmの薄型で、20気圧防水性能にも関わらず時計自体の厚みは9.3 mmに抑えられています。
小さめ時計ファンの心をくすぐる要素が満載で素晴らしい。
ところで竜頭はねじ込み式ではないんですが、20気圧防水です。クラブキャンパスはほぼ同じデザイン&非ねじ込み式で10気圧防水です。この違いが何故かご存知の方いたら、コメント欄等で教えていただければ幸いです。シンガポールの時計店員は知りませんでした。ノモスに聞けばいいんですけど。
見た目はどちらかというと「爽やか系」「可愛い系」のため、好みが分かれることもあるかもしれません。
しかし文字盤が紺色(アトランティック)のシックなものや、もっと鮮やかな赤色(シグナルレッド)や青色(シグナルブルー)もありますので、お好みで。私は上の動画にある白に水色文字のものが大好きです。これが私の今の本命です。
最新の自社製ムーブメント搭載ということもあって、価格は35万円くらい。
微妙に高い割に、時計に詳しくない人から見たら、ただのファッション時計と見られるかもしれません。ですが、そんなことはどうでも良い。
時計をよく見るほどにわかる作り込みの良さはもちろんのこと、ドイツ時計作りの伝統を受け継ぐ、優れた逸品だと思います。最近、ノモスの時計の中ではクラブが一番カッコよいのではないか、と思い始めてきました。黒文字盤のクラブは大きいのしかないですけど、めちゃくちゃいいです。
公式の製品ページはこちら(↓)。
ロンジン レジェンドダイバー MOP(36 mm)
スイスの老舗時計メーカー、ロンジンも小さめダイバーズを出してくれています。
前回も紹介しましたが、当時は発売(発表?)されたばかりであまりネットに情報がありませんでした。
しかし2021年3月現在も、私の最有力候補である、レジェンドダイバー 36mm マザー・オブ・パール(MOP、白蝶貝)を実際に購入した人のまとまったレビューはなかなか見当たりません。
かろうじてロシアの時計屋さんの宣伝ビデオがありましたので貼っておきます。
ロンジンによるこの時計のオフィシャルビデオは、ドレスを着た女性が何故か夜の都会的なイメージを背景に幻想的なカーテンに無闇に絡まりながら謎のポージングを披露するだけの、よくわからない、というかもはや買いたくなくなるほどダサいもので、実物の魅力を伝えているとは思えません。
シンガポールの時計屋で実物を見たところ、MOPの文字盤が美しく、ステンレスのメッシュベルトも結構厚みがあって高級感がありました。
この時計は、白蝶貝のボタンを付けた鮮やかなブルーの夏物ジャケットなんかに合わせたら、男性でも最高にクールだと思います。太陽が眩しいプールサイドでも、白蝶貝の文字盤が美しく映えることでしょう。
ただし、ちょっと気に入らないのが回転するインナーベゼルの質感。素材はおそらく塗装樹脂で、やや安っぽい感じがありました。また、良く見ると針の質感も値段の割にややペラっとした感はありました(微細な磨きがされていない)。
価格は25〜30万円くらい。白のレザーベルト(これは嫌ですが)のものだと並行輸入品で20万円以下で買えるようです。白ベルトの代わりに白と青もしくはミントブルーのツートンカラーのNATOストラップを付けても良さそう。
ノモス クラブ ネオマティックよりも安いし、MOPの文字盤を持つ時計は、コレクションにエキゾチックな風を吹き込んでくれる気がして、この二つが私の現在の最有力候補です。
製品ページはこちら(↓)。
ロンジン レジェンドダイバー L3.374.4.80.0 を見る | Longines®
タグホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル 300(36 mm)
【4/11追記】先日タグホイヤーから36mmのダイバーズウォッチが発表されました。
タグホイヤーにはこれまでそれほど興味はなかったのですが、これはいい!
十二角形のベゼルは、昔欲しかったボーム&メルシエの『リヴィエラ』というダイバーズウォッチを連想させるもので、ごっつくなりがちな潜水時計になんとも言えないエレガンスを付与しています。
搭載機械はETAベースとはいえ、これは実にセクシー。特にブルー文字盤のダイヤ付きが私の好みです。ついに時計の小径化はかなり現実的になってきました。
小径かつ本格派のダイバーズウォッチとしてはこれは本命ですね。
通常の白文字盤と黒文字盤がUS$2,800、ダイヤインデックスの青文字盤でも、たったUS$550アップのUS$3,350というのも良いです。
公式サイトの製品ページはこちらです。
おまけ:チューダー ブラックベイ (36 mm)
前回の記事で本名として紹介したTudor Balck Bay 58(39 mm)は、先日青色バージョンも発売されました。黒金バージョンと同様、めちゃくちゃ人気で常に品薄、ウェイティングリスト状態のようです。
そんなTudor Black Bayは、32 mmと36 mmのバージョンもあります。文字盤は黒と青で、価格は約25〜27万円ほど。こちらは割と普通に売ってます。追記:2021年4月、新色としてサンレイ仕上げのシルバーダイアルも出ました。
しかしこちらは防水性能が150 mとなっています。水泳は大丈夫と思います。ケースとブレスレットの質感も良く、アホみたいに20気圧に拘らない場合は、いろんな服装にも合いそうですし、良い選択肢だと思います。
どうでもいいですが、最近日本語のブランド名が「チュードル」から「チューダー」に変わりました。王朝の名称に従うなら「テューダー」にして欲しかったし、どうも英語では「テュードア」に聞こえます。響きに拘って名付けられたという「ロレックス」の姉妹ブランドとしては「チューダー」って「チューチューを食べるキカイダー」みたいで安っぽい気がするのは私だけでしょうか。気品漂う響きの「テュードア」にして欲しかった。
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以上、7本+1本を紹介しました。
前回の39 mm縛りから38 mm縛りにするだけで、選択肢がガクンと減りました。前回と被るものもありましたが、それはいまだに私が迷っているものです。
39 mmでも良いという方は、ぜひ前回の記事も併せてご参照ください。皆様の夏用時計選びの参考になれば幸いです。