Fennesz(フェネス)の前作『Becs』から実に5年ぶりとなる、通算7作目のアルバム『Agora(アゴーラ)』が発売されました。
本作は、(理由は不明ながら)いつもの録音スタジオが使えなくなったため、彼の住むアパートの寝室にて、最小限の機材で作成されたとのこと。
そのため、収録された曲はどれも、懐かしい雰囲気の漂うオールドスクールなサイバーパンク系グリッチ風味のアンビエントに仕上がっています。
正直なところ、聴いて衝撃を受けるような新しさは皆無です。とは言え原点回帰というほど意識的な感じでもなく、自然な雰囲気がとても心地よいです。
轟音や急激にうるさくなったりするパートがない、終始緩やかな抑制されたシルキーなノイズの起毛絨毯は、私のような大学時代に00年代エレクトロニカ・サウンドの洗礼を浴びまくった40歳そこらのおっさん連中を包み込み、記憶の中にある集会所(Agora)=ライブハウスの心地よい暗がりに運んで行ってくれそうな気がします。
以下で収録曲のメドレーが聴けます。
収録されているのは全4曲で、どれも10分超えでトータル約47分です。
収録曲リスト
1. In My Room
2. Rainfall
3. Agora
4. We Trigger the Sun
それぞれの曲タイトルもアンダーステイテッド、かつイマジネイティヴでいいですね。
「フェネスすげー! 傑作!」というようような類の作品ではないですが、すでに今年で57歳にもなろうという熟練の電子音楽家による、奇をてらわない落ち着いた風情の、味わい深い一枚です。
フェネスを聴いたことがないという方には、その名を一躍有名足らしめた、2001年の電子音楽史上に残る傑作『Endless Summer(エンドレス・サマー)』もおすすめです。
電子音楽にエモーショナルでノスタルジックなフィーリングを溶け込ませた作風は、数々のフォロワーを生み出しました。
先日聴き直したら、一部で若干の古さは感じてしまいましたが、それでもやはりこのイメージ喚起力は恐るべし。
いま青春を謳歌している若い人にもおすすめです。以下はタイトル曲です。やっぱ泣けるな。