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リネン(亜麻)のポケットチーフを色々染めてみた

男性が身に付けるポケットチーフについて

ジャケットを着用した際、左胸のポケットにポケットチーフ(あるいはポケットスクウェア)を挿入することは、ガラスのハァトを持つ紳士にとって必須の身嗜みであります。

夏でも冬でも、いつでも清涼感あるリネンの白いチーフが、見た目爽やか洒脱に垢抜けたルックスを実現します。

英語で「dapper」(パリッとして粋な)というやつです。

シルクのチーフを普段から身につけるのは「chic」かもしれませんが、やや大仰で「dapper」にはならないと思います。

しかし、いつも万能の白の麻チーフばかりというのもやや退屈で、ネクタイの色などに合わせてちょっとカラフルなものも欲しくなるのが人情というもの。 

ちなみに、「結婚式向け」みたいに一緒に売られていたからと言って、ネクタイと全く同じ素材・色・柄のチーフをセットで身につけることは、スタイルにおける色・肌理の陰影を重視しない安易さが美意識の欠如を露呈するもの、つまり「ダサいもの」とされていますのでご注意を。

ベージュ、レッド、そしてモーブ色に染めてみた

というわけで、白の麻チーフを自分で染太郎と思い立ちました。

しかし、ハイ・ブランドとファスト・ファッション・ブランドへの二極化が著しいシンガポールでは、こういう小粋な品はどこにも売っておらず、往生しました(エルメスとユニクロに行列はできるが、小洒落たセレクト・ショップはいつもガラガラ)。

しかしさすがAmazon Japan、いい感じのものがすぐに見つかりました。 割と肌理細かく柔らかいリネンが使われており、染め実験どころか、もちろん普段の使用に十分な品質です。

染める色については、白と並んで定番の水色のリネンチーフはすでに既製品を持っていたため、温かみのある装いを演出できるベージュ、自由平等博愛ファッションに必須のレッド、それから極め付けにゲルマント公爵夫人の象徴であるモーブ(薄紫色)の3色を染めてみることにしました。

しかし失敗するかもしれんのと、先日大学を卒業して就職したシンガポール人の友人に一枚、卒業&就職祝いに何かネクタイと一緒にプレゼントしてやろうと思って、5枚大人買いしました。

さて、染めるにあたり、ベージュは紅茶で良いとして、レッド、モーブについては染料がいるためAmazonで検索。したところ染料の有名ブランドっぽいDYLONの染め粉を発見。分量少なめでお手頃価格。

赤に種類はあれど、多分この「チューリップレッド」がフランス国旗の赤に近い気がしてこちらを購入。

モーブ色用としては、やや青みがかった「ラベンダー」と迷いましたが、赤みのある紫「バーレスク・レッド」なる色を薄く染めた方が、脳内イメージのモーブ色(微かに赤みのある薄紫色)になる気がしてこちらを購入。

まずは紅茶でベージュに挑戦

紅茶染のやり方は、適当にインターネットを検索し、その後、大体わかったところで大きめの鍋に水を沸騰させ、濃ゆい紅茶を作る。

隠し味に緑茶とジャスミン茶も少量投入。スプーンで掬って口に入れると猛烈に渋い味がしました。

後の色落ち防止のために塩を適当にどさっと入れてよくかき混ぜ、温度がいい感じに下がったところで、ポケットチーフをふわりん、と投入。

清楚な白いチーフが、地獄のようにどす黒い液体に沈んでいく様を複雑な気持ちで見届けた後、たまにかき混ぜて、色ムラができないようにします。1時間くらい漬けたところで出来たのがこれ。

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使用・洗濯後の写真です。おもくそ色ムラできてますが、使えなくもありません。

しかし思ったより色が濃すぎたので(1時間も付けたら当たり前。ていうか紅茶が勿体無い気がした)、もっと薄いベージュを求めて、再挑戦。

今度は漬ける時間を5分くらいにしてみました。結果はこれ。

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実にいい感じに仕上がりました。写真ではあまり違いが分かりませんが、実物は茶色っぽさが全く違います。服装に温かみを添える際に良いのではないかと思います。

フランス国旗の赤は出せるか

次に赤。これは市販の染料なので染め方がパッケージに記載されています。

40度のお湯500 mlに染料を全部入れて混ぜる。

その後、別のタライやバケツに同じく40度のお湯6リットルに塩を200gほど溶かして、先程別で作った染料液を投入。よくかき混ぜてからポケットチーフを入れました。

こちらも、新品のウェディング・ドレスのように白いチーフが、ドス黒い血のような液体に沈んでいくのを見ると、微かに背徳感を催します。

紅茶によるベージュと異なり、こちらは真っ赤に染める必要があるので、途中何度かかき混ぜながら、1時間以上浸け置きました。そしたら結果はこれ。

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狂気のマゼンタ味が少し感じられるものの、ムラもなく、綺麗な赤色になりました(写真ではえらくどぎつく見えますが、実物はもう少し落ち着いた赤色)。

しかしこの赤色、パッケージのチューリップの濃いめの赤色とだいぶ違う気がする。チューリップ・レッドは間違いだったのか。しかしフランス国旗の赤はそもそも真っ赤である、というわけでこれはこれでよし。

白シャツ、ネクタイなしの上に青ジャケットを羽織った際に身に付ければ、まるで胸元に薔薇を刺した自由平等博愛の騎士みたいになります。

ゲルマント公爵夫人のモーブ色を求めて

「ゲルマント公爵夫人」とは、マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』に登場する架空人物の一人です(モデルの一人はかのフォーブール・サン=ジェルマンでブイブイ言わしたグレフュール伯爵夫人)。超金持ちの貴婦人で、語り手の主人公による憧憬・幻滅・恋慕・無関心の対象として様々な描かれ方をします。

そんなゲルマント公爵夫人の纏う絹のスカーフの色がモーブ色であり(最初に憧れの貴族の人間っぽさに幻滅するシーンでの描写であるが後日その幻滅を妄想力で乗り越えて勝手に恋に落ちてストーカーになる)、ほかにも故郷の田舎町コンブレーに咲くリラ(ライラック)の花やら、エロいアスパラガスの鬱血した先端など、この薄い紫色は度々出てきます。

主人公の妄想を読む読者の妄想の中でも、モーブ色は特別な意味合いを持ってくるもので、『失われた時を求めて』の全体が、モーブ色の霧に包まれたイメージさえ持っている読者は、私だけではないと思います。

そんな憧れの色を求めて、同じようにバケツに染色液を作り、黒紫のブラックホールみたいな液体に、白いチーフを無慈悲に投入。

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長く漬けると濃ゆい紫、ヴァイオレットになるのはわかっていたので、薄い紫色(モーブ色)になるよう、2〜3分ほどで取り上げて、すぐに水ですすいで脱水。

できたのがこれ。

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確かになかなか綺麗な薄紫色になりました。

しかし、モーブというにはややピンクが強い結果となり、紫色のネクタイとは合ってないこともなくはもないけど、やっぱり白の方がスッキリして、ベターな感じ(写真では余計にピンクに見える)。

それでちょっと別な組み合わせを試してみると、

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「ソラーロ」スーツ&変わり種のやらしいネクタイに合わせてみたら、バラでもリラでもなく、期せずして、シンガポールの国花、バンダ・ミス・ジョアキム(蘭)の紫ピンクのように見えてきて、東南アジアの遊び人的な雰囲気が出ました。この組み合わせは悪くない。

しかし、理想のモーブ色とはちょっと違う残念な結果に。もう少し青みが必要。染め粉は「ラベンダー」の方が正解だったのであろうか。

* * *

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ともあれ、リネンのポケットチーフ・コレクションが一気に増えました。

次は懲りずに緑に挑戦予定。

リネンのポケットチーフは社会人必携です

今日(6/21)から2日間は、年に一度の『Amazonプライムデー』。

リネンのポケットチーフをお持ちでない方がいらっしゃいましたら、下のどれか、お買い物のついでに5枚ほど買ってください。

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