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「今回は見送らせていただきます」の適切な言い方:いい感じのビジネス英語(61)

シンガポールではワクチン接種率が80%を超えたにも関わらず、結局コロナ前の生活には一向に戻れていない今日この頃、退屈なシンガポールから動けズ、「タイに行きたい」などと日本語で一番しょうもない駄洒落を独り言ちてしまうくらい退屈です。

しかし実際のところ、私のような就労ビザで働く人間は、いま日本に行ってシンガポールに戻ることは可能です。しかし、戻った時に超監視される自宅隔離や、往復で何回もあるPCR検査が億劫で、踏み切れません。

会社には11月には一度帰って、年明けまで日本に居させろと言ってしまったのもあり、もはや9月も後半になった今、実に中途半端な時期で、この秋に日本に帰るのは見送ろうと考えています(紅葉を見れない人生は、とても寂しい)。

と言うわけで、今回はその「見送る」という、日本語ビジネス会話でもよく使われる便利な言葉は英語でなんと言うのがベターなのか、適当に考察したいと思います。

「見送る」と言う日本語的、婉曲的な言葉

しかしよく考えると、日本人ビジネスマンがよく使う「今回は見送らせていただきます」って、婉曲的で、日本語らしい表現です。

何かモノの購入を検討の末に、やっぱやめておく時に、わざわざ「見送る」と言うことは、モノに対して、去っていく人の背中を見るような視点が感じられます。思いやりの心。

とはいえ営業の人間にとっては、「見送らせていただきます」なんて言われても、相手からの思いやりなどは感じず、相手からつき離されたような冷たさのみを感じることもあるのが、日本語の面白いところです。婉曲的に伝えたら余計傷つけるからはっきり言え的な。Vice versa.

さて、Weblio英和辞典で「見送る」を検索して出てきたのは以下の単語、慣用句。

walk, escort, see, see ~ off, send off, postpone, watch after ~, let go, defer

Weblio英和辞典

大半が「人を見送る」の表現で、「やめとく」の「見送る」はこの中では「postpone」と「defer」でしょうか。

両方とも「(今回はやめて採用を)延期する」というような意味。

延期する、と言うことは次のチャンスがまだあると言うことで、「見送る」における丁寧さと冷たさの入り混じったニュアンスはありません。とはいえ希望は残る。

ちなみに、「postpone」は日本人英会話初級者がやたらと使うけど、英語がうまい人は会話ではあまり使わないような気がしている単語です。やや硬い。文書的。

代わりに「push back」の方がよく使われ、こういうのがさっと言えるといい感じです。

余談ですが「時間」を未来に「back」すると言うのはおかしいので、「push back」されるのは出来事そのものであることに注意が必要です。つまり主語が「Meeting」とかになる。「The meeting time was pushed back to 3 pm」は間違いで、「The meeting was pushed back to 3 pm」が正しいはずです(多分。確信なし)。いや、前者も通じますけどね。

人工知能の回答

次に、英語を使って仕事しないといけなくなった日本人にとって、もはやなくてはならない存在となった我らが『DeepLe』で「今回は見送らせていただきます」を英訳したところ、結果は次の通り。

I'm going to pass on this one.

I will pass on it this time.

DeepLe

さすが人工知能、昨日食べた晩御飯を思い出すのに5分もの処理時間を要する私の痴脳を遥かに超えるパフォーマンスを発揮、「人を見送る」と言う意味合いをきっちり排除してくれています。

今回のニュアンス的には、2つ目の方がベターですかね。

しかし、この「pass」と言う単語には「通り過ぎる」と言う意味があり、「見送る」よりもやや冷たい、提示されたモノを大股で跨いで過ぎ去るような、無視するようなニュアンスがあり、間違いではないですが、やはりどこか日本語の「見送る」とは異なります。

私のオススメ

そこで、私が考える「pass」に代わる単語は「skip」であります。

skip」は日本語にもなっている通り、「スキップする」「跳ね回る」と言う意味のほか、「話題を変える」と言う意味もあり、はたまた「飛ばす」「(朝食などを)抜く」「(授業などを)休む」と言った意味もあります。

よって、「購入を見送る」に「skip」が使えます。

I'll skip this one. (これは見送ります)

We will skip this service. (このサービスは見送ろうと思います)

みたいな感じで、後ろに名詞をつけて使います。

I'm skipping lunch today. (今日は昼飯抜きやねん)

おそらく辞書で調べた限り、「skip doing something」は間違った使い方です。が、それでも通じるというのがリアル英語です(東南アジア)。しかし、英国人と喋るときは避けた方が良いかもしれません。

と言うか、単純に

Afradi but we'll skip this time.

すみませんが、今回は見送ります。

と言う感じで会話やメールで使うと、より「見送る」っぽい雰囲気が出ます。

pass」は無視、否定するようなニュアンスがあるのに対して、「skip」は楽しげに去っていくニュアンスが出るのでよりマイルドでしょう(嘘です)。

* * *

正直に言うと、私の痴脳では日本語の「見送る」のニュアンスと同じ意味合いを持つ英単語が思いつきませんでした。

skip 〜」は、英語ネイティブの人がよく使うことに気づいた基本単語の一つです。

と言うか、この単語は中学か高校で習うもので、意味は誰でも知っているはずなのに、これが実は会話でよく使われると言うのは習った記憶がありません。

ほんまに学校はこういうのを教えろやと今になると思います。

なお、「見送る」(やめる)の意味以外でもプレゼンをしている途中で、

I'll skip this slide.

このスライドは飛ばします

と言ったり、会議中に、

Can you skip to the next point? I've got to go in 10 minutes.

次のポイント行ってくれん? あと10分で出なあかん。

といった感じで、本当によく使われます。

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