前回はシンガポールのセレクトショップを紹介しました。
今回は、新しく訪問した仕立て屋さんがなかなかいい感じだったので紹介します。
ローカル経営の小さな仕立て屋
紹介するのは、Yeossalというシンガポール人経営の小さな仕立て屋さんです。
場所は、ボート・キーのCircular Roadで、有名なクラーク・キーから少し川下に降ったところにある古い低層の建物が多く残るエリアです。飲み屋が多い場所です。店は2階にあり、入口がめちゃくちゃわかりにくいです。
一応看板が出ていますが、歩いて向かうと、建物の暗い軒下を歩くことになるので、見過ごしやすいです。
入口は、上の写真中央下部のいきなり階段があるところで、階段を登った2階がお店です。私がここに到着したとき、胸元をあらわにしたセクシーなミニスカートのタイ人のお姉ちゃんが隣のマッサージ屋の階段を登っていったので、思わず間違えてそっちに入りそうになりました。
さて、中に入ると、割と店員はそっけない感じで、なりやら仕事に集中しており、一瞬「やばいとこ来てもうた」とひるみかけましたが、色々話して行くうちに打ち解けて、生地を選ぶ段階では4人くらいの店員と「日本は飯がうまくてええとこや、毎年行ってるわ」なんて雑談ができ、土曜日で早退けの若い店員の奥さんか彼女も店内のソファに座っており、なかなかアットホームな雰囲気の店です。
ちょうどいい感じの価格設定
今回の目的は、年末に冬の日本に行けることを期して、フランネルのトラウザーと、ブルーのドレスシャツを仕立てることでした。スーツはまず出来を見てから、次回以降ということで。
常夏のシンガポールでは、出来合いのフランネルのトラウザーなどほとんど売っていません。そこで事前にYeossalのウェブサイトをチェックしたところ、いい感じの形のフランネルトラウザーを宣伝していたのでここにしました。実をいうと以前、高級テイラー Dylan & Sonsを紹介してくれたシンガポール人I君の紹介でもあります。
今回注文したのはこちら。
https://www.yeossal.com/collections/trousers/products/tailored-business-trousers-vbc-woolen-flannel
標準価格はS$308(約24,000円)。
VBC(カノニコ)の生地で色々細かい注文ができることを考えると、イタリア製などのトラウザーをセレクトショップで買うよりも良いかもしれません。そういうの大体3万円以上はするし。
残念ながら私が行った時は、VBCのミディアム・グレーの生地の在庫がなくなっており、ソルト&ペッパーな濃いグレーをお勧めされました。
ソルト&ペッパーのグレーは確かにクラシックでかっこいいのですが、私が着用に及ぶと、往年の映画スターではなく、昔の高校のおじんの国語教師みたいになりそうな気がしたので、今回はとりあえず、よりヴァーサタイルなミッド・グレーにこだわり、結局、上記価格にプラス$90のStandeven(スタンドイーブン)の生地を別途注文することにしました。
店員によると、シンガポールでVBCやStandevenのフランネル生地を扱っているのはここだけらしいです(やや眉唾ですがフランネルの需要が低いことは事実)。
最初に生地を決めると、テキパキと採寸してくれ、各種ディテールを決まった中から選びます。ポケットの形・数、プリーツの方向・数、裾幅の長さ、ベルトループかサイズアジャスターか等々、希望があればもちろんちゃんと細かく指定できます。
トラウザーの納期は、生地の仕入れ期間も入れて3週間とのこと。
シャツは$238(約18,000円)でした。シンガポールでの自分にぴったりの仕立てと考えれば、決して高いことはないと思います。もちろんもっと安いところはたくさんありますが、生地は中国製の化繊混だったりします。
シャツの納期は、1〜2週間。予想より早い。
ウェブサイトにあるトラウザー納期が6週間という記載は、海外からの注文の輸送期間も入れたものかもしれません。注文は日本を含む世界から受け付けているようです。サイズは自分で指定する必要ありますが。
ちなみに、スーツは、パターンオーダーで$1,200(約10万円)から。マスター・テイラーによるビスポークになると、$2,000くらいから、生地によっては$3,000くらいで、Dylan & Sonsのような高級テイラーよりはお手頃な価格設定となっています(ハンドメイドの割合の違いはあると思います)。
シンガポールの街中では仕立て屋さんをよく見かけます。しかしその多くは、中国製生地を使った安さが売りのところが多いです。クラシックをしっかり学んだマスター・テイラーがいて、さらに最近のファッションのトレンドもきちんと捉えており、かつ、いい感じの価格設定をしているテイラー、という意味ではこのYeossalはなかなか良いかもしれません。もちろん出来栄え次第ですが。
そう言えばこの変わった店名の由来を訊くのを忘れてた。
出来上がったらまたレポートします。
Yeossal
33A Circular Road, Singapore 049389

BESPOKE STYLE(ビスポーク・スタイル) A Glimpse into the World of British Craftsmanship
- 作者:長谷川 喜美
- 発売日: 2016/04/11
- メディア: 大型本