数字の言い方(命数法)が異なるからややこしい!
英語のビジネス会話の中で、パッと数字が英語で出てこずに苦心した経験を持つ方は多いと思います。というかめちゃくちゃ多いと思います。
というより、ネイティブ・スピーカーではない日本人ビジネスマン全員が苦労したことがあるはずです。
これはひとえに、命数法(数字の言葉による呼び方=数詞)が、言語により異なるからです。いわゆる、千や万、億を使う日本人には最初なじみにくい、million(100万)とかbillion(10億)ですね。
命数法だけでなく、通貨単位も異なってさらにややこしく!
営業のひとの場合、打合せなどで、お客さんから、とりあえず概算価格を口頭で訊かれることはよくあります。そんなときは、パッと数字が言えた方がよいわけですが(価格を言うときにはすぐに言わずにもったいぶるとか、そういう営業テクニック的な話は置いといて)、これがなかなか難しい。
なぜなら、命数法だけでなく、海外では当然通貨が異なるので、例えばアメリカ人相手に、「5億円です(500 million Japanese yen)」というのはちょっと不親切で、普通は概算価格は日本円から米ドルに換算してから伝えると思います。
そんなとき、多くのひとはこう考えがちです(一部誇張あり)。
例えば「5億円」という価格を米ドルで伝えたい場合・・・
米国人顧客「コレダイタイおイクラデスカ~?」
日本人営業マン「(えーっと、概算価格は5億円やから・・・いやちょっと待て、5億円でええよな、まええか、概算やし、えーと・・・millionが百万やから、百万、千万、1億・・・ああ、ファイブ・ハンドレッド・ミリオン・・・。いやでもこれは円やからドルにせんと、って、えーっといま1ドルなんぼやったっけ? 知らんわ。まぁ・・・概算やから110円ってことにしとこか、500万ドル割る110? なんやねんそれ! アホか! 100円にしといたろ・・・えーと、5万ドル? え? 5万って英語でなんていうんやったっけ? 1000が50個で・・・)フィフティ・サウザンド・ダラー。」
米国人顧客「Fifty thousand?!?! Are you sure?」
日本人営業マン「Ah...Wait a minute・・・(え? ちょっと待って・・・合ってる? ・・・ちゃうやん! 500万ドル割る100じゃなくて、500百万(million)割る100やん! 普通に5百万ドルでええやん、俺、アホ!・・・)バジェタリー・プライス・イズ・ファイブ・ミリオン・ダラ~」
米国人顧客「・・・(諦念の交じる苦笑)」
なんてことが起こりがちです。私がアホなだけかもしれませんが、ここで言いたいのは、日本人は、上の例にあるような「500百万」というような数え方にまったく慣れていない、ということが、英語で数字を言うときに感じるしんどさの原因であるということですね。
これだと、答えるまでに時間がかかって全然スマートじゃないです。
ちなみに、「概算価格」は英語でいうと、Budgetary price、もしくはBudgetary costと言うといい感じです。「概算」という言葉をそのまま訳して、Rough price とか、Approximate priceでも、なんならいっそのこと、About priceでも通じるとは思いますが、概算価格を伝えるということは、顧客に"予算"取りを促したり、予算作成の参考にしてもらうためですから、Budgetary (予算の形容詞)を付けます。
なお、その他の言い方として、Indicative price(参考例示価格?)なんて単語を自然と使えると、デキる商社マン的なイメージが漂います(個人的思い込み)。
インド人が入るとさらにさらにややこしく!
しかしこれでは終わらず、インド人が入ってくると余計にややこしくなります。
最近はインド・ビジネスを手がけている、もしくはこれから考えている日本人も多いでしょうし、また、ここシンガポールでは、タミル語(南インドの言葉)が公用語のひとつに指定されているように、人口の約10%は、インド系です。
そんなインド人は、西洋で使われるmillion、billion以外に、lahk(s)、crore(s)という数詞を使うので、ビジネス会話の中でも、「10 lahks」とか「100 crores」という表現が普通に使われます。最初はわけがわかりませんでした。
lahk(s)は、10万
crore(s)は、1000万
です。私の身近にいるタミル人は、
lahkを「ラック」、lahksは「ラクス」
croreを「クロール」、croresを「クロース」
と発音します。Wikipediaには「ラーク」や「カロール」とカタカナで書いていますし(参考:インドの命数法 - Wikipedia)、「クロレス」という言い方も聞いたことがあるので、インドの地方によって発音が異なるのかもしれません。
つまり、日本では4桁ごとに位を取り(そして西洋と同じくゼロが三つでコンマを付ける)、西洋では3桁ごとに位取りしますが、インドでは2桁ごとに位取りをするということです。
よって、インドの会社の見積書など、数字にコンマがゼロ2つごとに付いているので(最初の千だけゼロ3つ目にコンマ[後述])、我々日本人にはとても読みにくい場合があります。金額がパッと頭に入ってきません。
書類だけでもそうなのに、これが会話に入ってきたときは混迷を極めます。
先方から「エイティ・クロース?(80千万=8億)」なんて訊かれても、普通の日本人はピンと数字が思い浮かばないし、「インドルピーでいくら? いや、USドルでもいいよ」なんて続けざまに言われて通貨換算問題が入ってくると、最早混乱しかしません(実体験)。
パッと英語で言えるようにするために
というわけで、ある程度、命数法/通貨の違いについては、憶えるしかないし、それよりも「慣れ」が重要になってきます。ベストは、そうした外国で生活することで、通貨の感覚も現地通貨感覚になってきて、自然と出てくるようになります。
・・・なんて言ったところで、世界を股にかけるビジネスマンがそんなひとところに留まっているわけもなく、いろんな国でスマートに会話しないといい感じにはなれません。
というわけで、私がオススメしたいのが、「習うより慣れろ」ではなくて、「習うより慣れるよりカンニングしろ」です。
例えば海外出張に行くときなどは、よく市販の手帳に元号と西暦の対照表が挟まっているように、以下のような数字の英語での言い方対照表を挟んでおく、もしくはノートのウラ表紙内側などに貼っておくことです。もしくはノートパソコンのデスクトップにすぐに開けるメモファイルを置いておく。
そうすれば、話の途中で数字を言う必要があっても、割りと落ち着いて、言うことができます。そんなメモをチラ見して、すこし反応は遅くなるかもしれませんが、上述したような、頭の中であれやこれや考えるよりもベターなはずです。
数字と数詞の各国対照表(日本/西洋/インド)
日本/西洋表記 | 日本 | 西洋 | インド | インド表記 |
1,000 | 千 | 1 thousand | 1 thousand | 1,000 |
10,000 | 万 | 10 thousand | 10 thousand | 10,000 |
100,000 | 10万 | 100 thousand | 1 lahk | 1,00,000 |
1,000,000 | 100万 | 1 million | 10 lahks | 10,00,000 |
10,000,000 | 1000万 | 10 million | 1 crore | 1,00,00,000 |
100,000,000 | 1億 | 100 million | 10 crores | 10,00,00,000 |
1,000,000,000 | 10億 | 1 billion | 100 crores | 100,00,00,000 |
10,000,000,000 | 100億 | 10 billion | 1000 crores | 1,000,00,00,000 |
100,000,000,000 | 1000億 | 100 billion | ??? | |
1,000,000,000,000 | 1兆 | 1 trillion | ??? |
こういう表は、例えば、営業のひとの場合、自分の会社の扱う商品の参考価格等があれば、それも記載した表などにアレンジするとより良いと思います。
ところで、インドでは、上の表の「???」はなんと呼ぶかわかりますか?
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答えは上からそれぞれ、
10 thousand crores = 10千1000万 = 1000億
1 lahk crores = 10万1000万 = 1兆
Croreの次の数詞をもってくるのかと思ったら、わけがわかりません。
インドの命数法には、一、十、百、千以降、2桁毎に、呼び方があるようなんですが、日常生活的には、LahkとCroreでぜんぶ済ませてしまうらしいです。
上述した、100百万とか、10千万とか、そういう数え方を表を見ずに、咄嗟に言えるようになるためには・・・残念ながら慣れしかないと思います。