昨日の朝、シンガポールDBS銀行の職員がコロナウィルスに感染したというニュースを読みました。
その職員の働くMBFC支店が、まさに私が昨日、ある急ぎの用事で出かけようとしていた支店でした。同じフロアの300人が避難して在宅勤務になったとのこと。
念の為、別の支店に出かけたら、そちらも入口の半透明シャッターが下げられており、入る前に検温され、過去2週間以内に中国を訪問していないという宣誓書にもサインさせられました(そういやよくある手の消毒液はなかった)。昼時に行ったのにガラガラで、まったく待たされることなく用事を済ませることはできましたが。
日本の方が感染者の数は多いようですが、こんな厳戒体制なんでしょうか。しかしDBS、中に入れば職員はぜんぜんマスクしてませんでした(保健省のウェブサイトにも確かに「体調不良を感じなければマスクはしなくても良い」と明記されています)。
そう言えば、アメリカの大学の心理学の教科書に、日本でやたらと見かけるマスク姿を「迷信(superstition)の一例」として紹介したコラムがあったのを今思い出しました。私はマスクをすると、自分の顔面の臭いがマスクに移ってその臭いを自分で嗅ぐみたいになって臭いので臭いです。
さて、ひさびさに英語シリーズです。基本的なネタのベースは、以前にも紹介した「中学英語」で十分ビジネスで通用する英語は話せるというもので、そのコツを紹介します。
ビジネス英語とはなにか?
本シリーズ記事タイトルにも使っている「ビジネス英語」とはなんでしょうか。本シリーズでも何度か書いている気はしますが、あらためてここで考えます。
日本でよく英会話スクールや仕事の募集要項欄などに、「ビジネスレベルの英語力」などと書かれており、なんとなく「ビジネス」というと立派な感じがして、日常会話よりレベルが高そうな気がする方も多いと思います。
しかし全然違います。実は、多国籍な人が交わるビジネスの現場で話されている英語は、ほぼ中学~高校英語です(正確に言えば、それでなんとかなります)。
安月給でこき使われるバングラデシュ人ワーカーから、調子の良いシンガポール人営業マン、脳みそ入れ替えて欲しいインド人ITエンジニア、1時間6万円も取るようなエリート弁護士、どこの国もあまり変わらない官僚の人たちとも直接話す機会のある私が言うので間違いありません。
英語ペラペラの同僚インド人も、実はアメリカのハリウッド映画などは、英文字幕がないと「なに言うてるかようわからん」と言うくらいなので、さらに間違いありません。
ビジネス英語は、早口のアメリカ人やイギリス人との日常会話より断然簡単です。
「日常会話程度ならできるけどビジネスではまだまだ」とかいう人がいたら、彼/彼女の言うそれは、日常会話ではなく、ただのトラベル英会話です。
もう少し踏み込んで言うと、ビジネスで英語を使えるようになるというのは、なにをさしおいても瞬間的な発話力があるかどうかです。これに尽きます(本シリーズでも各所で同じ事書いてます)。
なにか言われて黙ってしまったり、「あー」とか「えー」とか言わずに、単純な英語でもすぐに発話できるようになること、これがいわゆる「ビジネスレベルの英語力」がある、と言って差し支えありません。
「そうは言ってもそれが難しいんじゃボケ」という方のために、中学~高校レベルの英語力で、スラスラ会話するコツを以下で紹介します。
※この記事を書き終えてから、検索したらまったく同じようなこと書いているブログがありましたが、決してパクったわけではありません。私にも実感としてあり、自ら気を付けている体験談的なものです。
状況・情景・結果を想像して言い換える
コツはたったひとつです。
言いたいことがパッと頭の中に出ない場合は、瞬間的にその言葉の情景を想像して、知っている単語で置き換えてしまうということです。
これをどれだけ瞬間的にできるかどうかが、「ビジネス英語力がどれだけあるか」ということです。
「いまこの件はあっちにボールがある」などとよく言いますが、ビジネスとは、大人と大人のキャッチボール。会話がぱっぱと続かないとビジネスになりません。
ビジネス会話から、日常会話的なものまで、以下に例を挙げますので参考にしてください。
ビジネスで出てきそうな会話例
コロナウィルスのせいで契約不履行にしよった場合って不可抗力に当てはまるんか? どないしたらええやろ?
もちろん「契約不履行」とか「不可抗力」という言葉には、それぞれ英語話者間では誰でも通じるビジネス(法律)用語があります。前者は「breach of contract」とか「non-performance」、後者はたいてい「force majeure」。
どれも結構難しい単語です。
上記のような意味のことを言いたいときに、そういう単語がパッと出てこないときもありますし、最後の「当てはまる」もなにげに、あれなんやったっけ? みたいになって、「true of~」みたいな、昔高校で憶えた表現を考えてしまいがちです。
そうなった場合は、すぐに頭を切り替えて、「不履行」とか「不可抗力」みたいな抽象的な言葉を具体的なイメージに変換して、超簡単な単語で言ってしまいます。例えば、以下のような感じ。
If they couldn't finish the job due to Corona virus issue, what can we do? Can we ask them to continue or not?
「契約不履行」→「仕事最後までやれなかったら」
「不可抗力」→「こっちになんかできることあるのか、ないのか」。
法律的に言えば、契約で不可抗力を規定した部分に「疫病、疾病」などの状況が明記されているかどうかなどが問題になると思いますが、この会話ではそんなことよりも、不可抗力にされて逃げられたら困るので、なんかできることないか、とだけ言っています。不可抗力が通ればなにもできないので。つまり、状況と要点を捉えて、超簡単な英語で言い換えた例です。
大雨が続いたために浸水したせいか稼働してない。すぐに交換できますか。
浸水(flooding/submerged/get soaked)とか稼働(working/rotating)とか交換(replace)とか、それぞれに適切な単語はありますが、そういう単語がすぐに出てこなくて言葉にするのに遅れるくらいなら、中学英語でぱっと言い切った方が良いです。「雨が続いた」なんかもなにげに言いにくい。
よって、例えば以下のようにアホっぽく言い換えてしまうと楽です。
Because of the heavy rain, water got inside and the machine spoiled. Can you give us a new one?
「続く」は無視して「大雨のために」とし、「浸水」は「water got inside」、「稼働してない」は「壊れた」ということにして「spoiled」(これが出ない場合は「broke down」でも余裕で伝わる)。「交換」を「give us a new one=新しいのくれ」で言い換えました。
交換というと「exchange」を思い浮かべる場合もあるかもしれませんが、それは価値のあるものを互いに交換なので、ここでは一方が壊れているので、意味が異なってしまいます。
たぶん全部中学英語だと思います。「spoil」は違うかもしれませんが、これは、「甘やかす」という意味よりも「壊れた」とか「潰した」という意味で、会話でやたらと使われるので憶えておくと良いです。
会社の雑談で出てきそうな会話例
年末は警察の交通取締りが厳しくなるので注意せなあかんよ。
「警察」は誰でもわかりますが、「交通取締り」ってなんやった「road management」? あ、「traffic control」か? さらに「厳しい」って「severe」?「strict」? などと会話の途中では意外と英語がぱっと出てこないものです。
そんなときも情景を想像することで、超簡単に言い換えることができます。
Be careful. End of the year, many police will come on the street.
「警察の交通取締りが厳しい」を「たくさんの警官が道路に来る」というふうに中学1年レベルに超ダウングレードして表現しました。
高校1年レベルにすると、
You have to be careful when you drive. You will see a lot of policemen in the city around the end of the year.
という風に、「交通取締り」が出てこなかったので、「運転するときは気を付けろ」と言い換え、「取締りが厳しくなる」を「あなたはたくさんの警官を見るだろう」に言い換えました。
また、長い文章を一文で言うことにもこだわらずに、簡単な短い文章に分けてしまうのもコツと言えます。
ペーパードリップでコーヒー淹れるときは、お湯を最後まで落としたら雑味が出るからやめたほうがいいですよ。
「コーヒーを淹れる」は「make coffee」でいいだろう、でも「お湯を落とす」? 「fall down」はなんか違うな、「雑味」って「苦味」のことやったっけ? などと考え出すと、なかなかうまく英語で伝えることができません。
こういうときも情景を想像することで、簡単に言い換えることができます。
When you make coffee with a paper filter, don't wait until hot water drop to the cup completely. It will make the taste no good.
・・・ちょっと例文に無理がありますかね。。。要は、「お湯を最後まで落としている」という情景を想像すると「お湯が落ちていくのを待っている」ことになるので、「don't wait until~」という言いやすい表現に換えています。
また、「落としたら雑味が出るからやめた方がいい」も、いかにも日本語的な文章ですので、文章を区切っており、「雑味」もよくわからんので、「no good」という超ジェネラルな言い方に変えました。
アホは風邪ひかんから安心しろ。
もはやビジネス会話ではないですが、これも「アホ」「バカ」は「stupid/silly people」? 「idiot」? 「retard」? うわっ、これはちょっと会社で使ったらあかんのでは?! と思うのであれば以下のように言えます。
No worry. Only smart people catch flu.
「アホは風邪ひかない」を「頭のいい人だけ風邪をひく」と、軽い冗談っぽく言い換えられます。日本語から英語に治すときは、こういう風に、逆の言い方を表現してみると、案外スムーズに言えることが多いです。
英語にも「品」というものは当然ある
しかしながら、ビジネスの現場では「品」というものも常に求められるでしょう。
日本語のような敬語がないと思われがちな英語にも、きちんと敬語は存在しますし、あんまり子供っぽい英語を使ってばかりいると、とくに相手が欧米の人だとやや問題になるかもしれないことは申し添えておきます。
文法がめちゃくちゃでも意味は通じたらいいとばかり思っていると、いつの間にか別の「意味」も伝わってしまうことがあります。その辺は臨機応変に、ご利用は計画的に。
とにかく、繰り返しになりますが、なんか言いにくいなぁと思ったら、黙ってしまうのではなく、情景を想像して言い換える(paraphrase)、できるだけ短文に区切ってしまう。これがスラスラと会話を続けるためのコツであり、こういうことを繰り返していくといつの間に英会話は上達しているはずです。